切手別納制度廃止へのカウントダウン?
図のような切手別納使用済シート類を久しく見なくなりました。かつては全国の別納使用例 (使用済) が郵政本省に集められ、外郭団体を通じて郵趣家に有償で払い下げられていました。高額すぎてなかなか未使用が買えないフルシートを格安で購入できたので、製版や目打を研究する郵趣家にとっては魅力的な存在でした。
切手別納郵便制度が始まったのは1919 (大8) 年ですからすでに100年以上の歴史があるのですが、去る5月17日付のプレスリリースによると、来る10月1日より100万円を超えた場合に限り切手による支払いが禁止されます。しかし、将来的には切手を使っての料金支払いを全面的に禁止し、現金払いに一本化しようという下心が透けて見えます。それゆえ、一連の推移はしっかり記録しておくべきものと考えます。
一般に公表された切手・はがき類の偽造・横領事件を自作の郵趣データベースからピックアップしました。この中で1999 (平11) 年1月に発覚した600円普通切手偽造事件は、我々郵趣家にとって非常に大きな影響を受けることになりました。この犯人は郵趣家を装って犯行に及びました。実際はまったくの無関係だったわけですが、この事件のために郵趣家が犯罪予備軍視され、冒頭の払下げシートが停止されてしまいました。払下げシートは子供さん向けの切手教室での教材、切手工作教室での加工材料、切手貼絵の素材など、多方面での活用方法がありましたのに、まさしくとばっちり、冤罪そのものでした。
ところが2018, 2019 (平30,31, 令元) 年頃になると、切手偽造など足元にも及ばない巨額な横領事件が次々と明らかになりました。なんと、郵便局に持ち込まれた別納シートを管理する立場の局員自身が、消印前の未使用切手を持ち出して金券ショップで換金していたのです。その額たるやいずれも数千万円から数億円というとんでもない額でした。しかも犯人たちは”遠い昔から他の局でもやっているはず”と開き直る始末。
つまり、とばっちりで郵趣家が白眼視されているのをこれ幸いと隠れ蓑にし、局員自身が横領事件に手を染めていたわけです。一連の事件について、郵趣家たる私は、いずれの日にか日本郵便さんにしっかりおとし前をつけてもらわなくてはと考えます。濡れ衣を着せられたままでは承服いたしかねます。
その結果、冒頭のように100万円を超えた場合に限り切手別納支払い禁止へと変わります。しかし、これも全く不届きな話で、偽造変造に備えてあらゆる手を尽くそうとも、肝心の切手を管理する人間がダメならぜんぶダメという意味です。いかに世界に誇る精密精巧印刷物の切手であろうとも、なんら意味も効果も発揮されないのです。ある意味、大規模で無意味で空疎な茶番劇です。
図は通信文化新報5月30日配信号に掲載された鳴美さんの切手買入広告です。ここにはっきりと10月1日以降に買入相場が大幅下落することが明記されています。これが私が目にした相場暴落を予見した最初の広告という歴史的資料としてここに掲げます。
なお、私が聞いたところでは、現状で額面の3割引の相場が額面の半分くらいまで落ち込むだろうとのこと。そんな記念切手の価値を貶めているのは他ならぬ日本郵便さん自身です。
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