仕事をやりくりして参観してきました。行きは急ぐ必要もないので富海駅AM6:57発の普通列車に乗って約2時間半、うつらうつらしているうちに広島駅到着です。最初に仕事関係の用件を済ませて11時頃に会場の広島県産業会館西展示館に。東京組の井上和幸副理事長、池田健三郎さん、田中啓之くんらは既に会場入りしていました。

HYPER Philatelistの自分ゆえ、テーマチク、トピカル関係について記します。まずは地元の八木栄一さんの作品「仏教切手事始め」から。各人がそれぞれ多彩な収集テーマに取り組みそして披露する、いわば一人一派的な収集を積極的に容認する自由な風土が大切だということが如実に現れている作品です。
仏教なる宗教テーマは特に言えることなのですが、専門的な知識がないといかんともしがたいのです。作品の冒頭に、世界最初の仏教切手は、1905年12月発行のタイ切手「チュラロンコン国王とワット・アルン」と紹介されている時点で即ハマリました。続いて世界最初の仏像切手は1931年発行の仏領インドシナ切手「カンボジアのクメール遺跡バイヨン」であるが、仏像全体を正面からとらえた純仏像切手は、1939年発行の日本切手「1次昭和・鎌倉の大仏1円切手」とありました。そうか、日本切手だったか!。
私が世界初や当該国初のアイテムにこだわるのは、歴史を積み重ねてきた郵趣、それもわずか150年ほどの近現代の範囲のことなのですから、各テーマの起源ははっきりさせることが当然だと考えているからです。始まりが曖昧な歴史なんておかしいでしょう。どうしてもわからないジャンルもありますが、初物(はつもの)は極力はっきりさせたいものです。それにはキャリアの長さと専門知識の両方が揃わないと大変です。
繰り返しますが一人一派こそが魅力的だと思います。

二人目も地元の方です。落合朋子さんの「藤田嗣治と戦争」です。美術に興味がある方ならディープなテーマであることはおわかりですね。郵趣家も藤田の戦争画を描いた戦前の官製絵葉書を見慣れているので、戦後の藤田の作風の違いが腑に落ちないとうすうす感じておられることと思います。時折見かけるフランス帰化後の奇抜な風体も、今ならまあアリかなとは思いますが、当時はかなり行っちゃってると思われたでしょうね。
希望としては全リーフをインターネット上に公開してもらいたいと強く感じました。収集品もまだまだ強化できる余地がありますし、何より郵趣家としての筋目の良さ、センスの良さが光っています。公開することでより良い収集品が集まってくるチャンスも広がりますので、ご当人にとってもプラスになることと思います。
日本では戦争翼賛画家との烙印が押されてしまったために、今後も日本切手上で藤田の作品を見ることはないと思います。むしろ外国切手上でひょっこり登場することでしょう。不勉強で私も知らなかったのですが、1968年にダオメー(現ブルキナファソ)が発行したクリスマス切手4種が藤田の作品です。その代表的な1枚を上に掲げておきます。

作品レポートの最後は小林卓夫さんのJAPEX'06銀銅賞受賞作品「アルゴリズミック・アート -数学的デザインの世界-」です。郵趣の連載記事でだまし絵・視覚トリックの新切手を取り上げた時に、編集部宛に丁寧な感想文を寄せてくださった方だと記憶しています。私の記事は反応らしきリアクションが皆無に近いので(本当に読まれているのかな?)、印象強く記憶しています。
小林さんは副題からもわかるように数学的な立場から作品を展開されています。私は実父が数学教師だった反動で(笑)その方面からのアプローチは苦手なかわりに美術面からの視点でこれらのテーマをとらえています。現代美術にもオプティカル・アートなるジャンルがあり、ネオン管や蛍光灯などの光源を変形加工したり発光色を変化させるなどの手法が使われています。連載記事でご紹介したナムジュン・パイクのビデオ・アートも広義のオプ・アートですし、今ではLEDやプラズマを使った作品も当たり前に見受けられるようになりました。作品ではこれらオプ・アートもアルゴリズミック・アートの一部分として取り上げられており、その体系立てには無理がなく好感が持てました。
そして、ここでも一人一派的収集の面白さを強く感じました。フラクタルといった数学的画像から、エッシャーのようなだまし絵、切手の切手の切手・・・・・と永遠に続く永久図案切手まで、実は非常に広い対象を、郵趣作品として成立しうるレベルにまで育てていくのは大変ですがすばらしいことです。何より、題材に対する数学的、美術的、哲学的バックボーンが必須と言う点で、従来の郵趣家とは大きく異なる資質が必要だという点も将来性を強く感じました。日本郵趣協会のホームページ「切手パビリオン」のバーチャル切手展で全リーフ紹介するに値する価値があると思います。関係者の方々、ぜひ検討してください。
どんなテーマでも同じではあるのですが、アルゴリズミック・アートの切手を発見するのは至難の業だと思います。片っ端から総当りで切手を目視確認して探さねばなりませんし、特にだまし絵などはだまし絵であることを見抜かなくてはいけないわけですから超弩級の困難さだと思います。上掲の小型シートはまさに畏れ入りました的アイテムそのものです。4番切手からシート地にかけて描かれている小型シートが当該小型シートでもある永久図案切手です。小型シートの永久図案はこれが唯一だそうですが、これを見つけたあなた、小林さんの眼力に敬意を表します。
実はある方からスタンプショウ=ヒロシマ'07のレポートを依頼されていたのですが、仕事で別の場所にも行かなくてはならないし、19日の宿が取れなかったので日帰りせねばならず、時間の余裕がないのでとお断りしたのですが、結局誘われて記念パーティーまでフル参加して最終電車で帰宅してしまいました。すんません、四国のKさんへ、この本文からテキトーに引用抜粋とかしてください。
収穫品にもけっこう恵まれましたし、いろいろネタはあるのですが、それらはまた別項にて。
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