密告郵便
エルガーラ福岡・天神の即売会で入手した逸品のひとつです。
消印は滋賀・守山局の昭和23年10月23日、拡大図のようにこれ自体が局名もしくは年月日刻印のどちらかを天地逆植にしたエラー印です。これだけでも面白いのですが、大事なのは宛名面右下に押された大きな青印です。国家地方警察/滋賀縣野洲地區警察署 23.10.25 と判読できます。裏面の内容から守山警察署に送られた刑事事件告発の密告はがきです。「要調査」の朱印が押されてもいますので、この密告情報に基づいて捜査が行われたものと思われます。長年にわたり「監獄郵趣」を収集テーマのひとつにしていますけれど、密告書を手にしたのはこれが初めてです。裏面は以下の通りです。
當字の寺田傳吉が実行組合長のときに相當区民より金を取り上げ不當支出をし発表せない 此の事は三宅の中井幸太郎に尋ねて調査し處分して下さい
差出人は小津村三宅の「三品」と表記しています。江戸時代に身分の低い侍のことを三一侍 (さんぴんさむらい) と言い、あるいは明治以降の新平民を意味する用例もあることから、名もなき一市民であることを意味した当て字表記だと思われます。
※すでに72年を経過しており当事者の生存は見込めないことから個人情報保護法の対象外と判断しました。また、ネット検索しても当該者や事件の類が全くヒットしないことから画像発表にあたって一切のモザイク処理は不要であろうとの常識的な判断をしました。万一、子孫の方や親戚縁者の方がご存命であり、問題ありの場合はご連絡いただきたいと思います。すみやかに善処いたします。
(20201104追記)
読者の方から「三品」は実名ではないかとのご指摘をいただきました。密告者は報復を恐れてふつうは本名は隠すものだからです。ですが、滋賀県守山市には今も100人以上の三品姓の方が住まわれており、私の「椙山」同様、その地域特有の地生えの苗字と判明しました。昭和23年でしたら今よりももっと大勢の三品さんがいらっしゃった可能性があります。
本当に本名を書いた、あるいは”木を隠すなら森の中”式にその土地で一般的な苗字を書くことで身元を隠した、いずれの可能性もあることを付け加えておきます。
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