懐かしい郵趣文献をYahooオークションで入手しました。かつて記念カバー、多局印カバーならここ!と言われた「カバー研究」誌No.39「特集 山口線SL復活」号です。
改めて説明するまでもなく、山口線の観光用SLの運行は今も続いています。その復活運行初日である昭和54年(1979)8月1日、私は山口県にはおりませんでした。この年の春に高校を卒業して上京していましたので、わずか4ヶ月時差のすれ違いでした。当時は特殊切手・SLシリーズも郵趣家の手元に豊富に残されていたので、実にさまざまな記念カバーが作られました。委細は当該号をご覧ください。(ここをクリック)
小型印など当時の押印物は後日入手しました。誌面を見ますと記念乗車券、記念煙草や記念瓶ビール(のラベル)なども発行されています。記念煙草なんて今ではとても考えられませんが、当時は何の疑問もありませんでした。それらをカバー上に貼り合わせたものも作られていますけれど「コンビネーション・カバー」とか「コラボ・カバー」といった言葉はまったく見当たりません。そうです、その用語自体も存在していませんでした。言葉だけではありませんよ、携帯電話もパソコンもなく自動車だってマニュアル車しかない時代です。ムダに冗長な印象も受ける押印記録も、そんな時代背景を考えていただければまた違った受け止め方ができると思います。

このような記念カバー、多局印カバー作りは昭和50年代までがピークだったように思います。上は昭和49年用年賀小型シートを貼った自作FDCです。広島県の竹原局、大竹局と回り、最後は福岡県の太宰府局まで行って風景印を押してあります。当時は高速道路網もまだ完成していません。どうやって移動したのか、やっぱり興味が湧いてきますね。そして何と言ってもこのカシェです。ガリ版の重ね刷りによる多色印刷です。当時既にこんな職人レベルの耕版・印刷技術を持った郵趣家がいたのですよ!。
カバー研究誌も新刊を見なくなり愛好者さんたちも高齢化で激減。もともときれいなカシェを描く能力、多色印刷を刷りこなせるガリ版技術がないとなかなかできなかった自作カバー作り。昭和60年代にかのプリントゴッコが大ヒットしたものの、往時のような愛好者増をもたらすことはありませんでした。これは記念特殊切手の額面が20円から50円、62円そして80円へと高額になり、発行件数もじわじわと増えていったことが原因ではないかと思います。
昭和から平成に切り替わった1990年代には既に自分はアップルのMacintoshコンピュータを使い始めていました。平成10年代に入ると他社PCもグラフィック能力が向上したのを反映し、素人ながらプロと見紛うできばえのカシェを早く大量に作ることができるようになりました。今では従来の切手収集家ではない人々の記念押印・引受消印が相当数増えているようです。かの人たちは組織化されているわけではないので愛好者数の増加数までは把握できていないものの、一般に普及しているという点で、ある意味望ましい形ではないかと思います。
このあたりのデザイン・プリントツールの発展と自作カバーの移り変わりを4月の第4回ファンタスティック・スタンプクラブ(FSC)例会でまとめてお話ししても面白いかもしれません。
日本以外を見てみましょう。第二次世界大戦が終わり民間航空路が伸長して行くのにさほど時間はかかりませんでした。左はヨーロッパ大陸の代表例でフランスのものを取り上げました。1946年から1947年にかけて、折り畳んで封かん紙で閉じるという方法でアメリカ、ベルギーなどへと回送しつつ押印してもらっています。終戦翌年でもうこんな遊びをしているのですから郵趣先進国は違いますね。開き図をクリックすると大きな画像が開きますのでご覧になってください。

あるいはまたこれはアメリカ、1948年の例です。アメリカン・エア・メイル・ソサイエティなる団体が作成したものです。前記と異なって状態が非常に良いことから、このままむき出しの形で実逓送付されたものではないように思います。そもそもスタート時点のマイアミの消印1948.1.13以外は全部捨て印(空押し)ですし、ちょっと普通ではないですね。巡回地を見ていくと当時の西側ばかり。ひょっとしてこれはアメリカ軍人またはOBの手によるものではないかと思いつきました。軍関係者なら民間航空会社を使わず軍用機で移動することができます。世界各国の米軍基地を巡るように押印して回ったのかもしれないと想像しています。右端には東京中央郵便局の1948.3.5の欧文櫛型印(金属印・C欄NIPPON表示)も見えます。これもクリックすると大きな画像が開きます。

最後に日本からの迷子郵便例を示します。これは意図したものではなく、完全に事故、ハプニングの類です。原因はどうあれ、さまざまなディスティネーションが見られる郵便消印の集りは郵趣家のマインドを刺激しますね。一生懸命解読してくれた記事も付いています。ぜひ読むだけでも追跡してみてください。

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