特殊印刷

December 31, 2023

15色カラーマーク

 スタンプマガジン誌12月号の販売広告に載っていたので買い求めました。国際切手展<ワシントン'06>記念にマーシャル諸島が2006年5月27日に発行した「アメリカ1922年シリーズ」を模した20種連刷シートです。これは2005年発行の「歴代アメリカ大統領」45種連刷シートのカラーマーク18色に次ぐ多さの15色です。このアメリカのユニカバー社によるオフセット15色印刷がいかにイレギュラーであるか、きちんと説明できますか?。

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 現代のオフセット印刷はCMYKの4色掛け合わせですべての色が表現できます・・・実際は違うのですが・・・。日本のふるさと切手「47都道府県の花」(1990)も図版の通りその4色しか使われていません。
 それから15年も後の時代にもなって、しかも印刷大国のアメリカで15色もの特色印刷をしています。これでは少ない経費で印刷可能なオフセット多色刷りの意味がありません。グラビア印刷並みの製造コストがかかっていると思われます。

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 以下は私の推論です。オリジナル切手は戦前の単色印刷です。もちろん4色分解技術など存在しない時代ですから全種が特色印刷です。特色印刷とは、印刷の熟練工さんが経験でインクを調合し、最初からその色そのものを作りました。なので、ルーペで観察しても異なる色の掛け合わせにはなっていません。
 そうやって作られた特色を、後の時代になって4色分解しても再現できるとは限らないのです。それゆえ、以前にも「戦前の単色 (特色) 印刷物を色分解しても無意味だ」と繰り返しお話ししています。特色と4色分解では色の表現域が異なるからです。詳しくはこちらのページを再読ください。

参照記事/提案:色の区別を示す目安はRGBを推奨

 カラーマーク部分を拡大してみましょう。15色すべて特色ですね。なぜ、わざわざこんなことをしたのか、それは色調が正しく再現できなかったからです。
 CMYKのどれか1色を調整すると他の切手にも影響が出て色味が変わります。「47都道府県の花」のような絵柄ではその差異がわかりませんが、本件の場合は下手がモロにバレてしまいます。変な色調であったなら、それこそ全米の郵趣家がクレームをつけるに違いないと恐怖したはずです。
 それに、そんな危ない橋を渡るくらいなら、経費が高くついても特色印刷してしまった方がリスクが少ないとの判断が優先されたのでしょう。で、結局20種の切手のうち同じ色の5種を除いた15色を特色インクで再現したものです。このあたりは印刷の実務経験がないと想像がつかないと思います。

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 さらにカラーマークに丸い黒枠がついている点にも注目です。これは枠内にカラーマークがぴったり収まることで印刷位置を合わせようとしたものです。枠からはみ出ている色の切手はいずれも右方向にずれて”オフセンター”状態になっています。

 

 

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April 22, 2022

提案:色の区別を示す目安はRGBを推奨

 先日配信になった郵趣研究誌165号を拝見しました。その9ページに貯金台紙の表紙の色を区別するためにCMYKの色分解が示されていました。以前、他の方も同様の目安を示されていましたが、どうせならCMYKではなくRGBで示した方が良いという提案です。

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<1.基本:厳密には再現は不可能>
 美術印刷を手掛けられる方なら常識なのですが、絵画作品をデジタル(光)や紙(印刷)で完全に再現することは不可能です。せいぜい2割が良いところだという基本認識を持ってください。その理由は簡単で、人間の目は光や印刷で再現できる領域よりはるかに広い色域が知覚できるからです。なのでRGBにせよCMYKにせよ、それで再現できることはあくまでも目に見える色の一部に過ぎません。
 解説画像のようにRGBの領域の方が広いので、どうせならCMYKよりRGBの方が表現しやすいことはおわかりでしょう。これだけで結論が出たようなものですから、色彩に関心がない方はここまで読んでいただければ十分です。
(解説画像引用先:Designature様

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<2.色の指標は何通りもある>
 図はPhotoshopのカラーピッカー画面です。右下にHSB、Lab、RGB、CMYKの4通りが示されています。最初の3つが光、最後のCMYKが印刷の色分解指標です。昨今はスキャナーの性能が上がり、簡単にCMYKに色分解できることから郵趣の分野でもこれを利用しようとされたであろう動機は十分に理解できます。ですが、CMYKではどうしようもなく適さない理由があります。

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<3.特色をCMYKに色分解するのは意味がない>
 CMYKはオフセット印刷 (プロセス印刷) のために開発された色指標で、少なくとも日本では高度経済成長期以前には多色印刷が可能な高性能のオフセット印刷機自体がありませんでした。それ以前は、ご存知のように凸版印刷が主で、意図する色になるように職人さんがひとつひとつインクを調合して作っていました。その色のことを特色 (とくしょく) と言います。特色印刷されたものを無理やりCMYKに色分解しても意味がないことはおわかりでしょう。元々のインクの合成が違うからです。

<4.CMYKとRGBの違い>
 小中学生時代に学校で習っていることですが、念のため改めてご説明します。
 CMYKはC (シアン)、M (マゼンタ)、Y (イエロー) の意味で印刷の3原色です。これを全部混ぜると黒 (Black) になります。ただし、全色を混ぜるとキレのない黒にしかならないことや、なによりインクがもったいないので、普通は安い黒インクを別に用意してCMYKと称します。色を混ぜれば混ぜるほど暗くなっていくのでこれを「減色混合」と言います。
 RGBはR (red 赤)、G (green 緑)、B (blue violet 青紫) の意味で光の3原色です。これを全部混ぜると白 (white) になります。色を混ぜれば混ぜるほど明るくなっていくので、これを「加色混合」と言います。
(解説画像参考先:DiGiTA様

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<5.RGBをCMYKに変換すると色が濁る>
 モニター画面では鮮明に見えていたのに印刷したら色がくすんでしまった経験はどなたもおありでしょう。これは第1章でお話ししましたように、CMYKはRGBより表現できる色域が狭いからです。この現象は必ず起きます。ですので、いかな目安とはいえ、CMYK分解された通りの数値をグラフィック・ソフトで再現しても、モニターに映る色も印刷した色も見映えが異なります。しかも各自がお持ちのパソコンとプリンターによってもすべて再現される色が違います。それを正確にやろうとすれば、キャリブレーションと言って関係者全員のモニターを同期させなくてはいけません。キャリブレーションは印刷のプロが費用をかけてわざわざ行うものであって、およそ郵趣家がやるには度を越しています。私もそこまではお勧めできません。
(解説画像引用先:学校販促応援隊様

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<6.最も現実的なのはカラーガイド>
 誰でもが最小の誤差で色指定ができるのは、実は最もアナログな方法です。日本では大日本印刷さんが出しているDIC (ディック) カラーガイド、あるいは世界的に通用するPANTONE (パントーン) カラーガイドを使う方法です。カラーガイドを対象物に重ね合わせ、もっとも近い色を探し出し、そのカラーチップの番号を示すのがいちばん正確です。
 古い切手や外国切手では日本メーカーのインクを使っているわけがないので、本当のことを言うと、これすらも近似色 (きんじしょく) に過ぎません。ですが、郵趣における色の指標としてはこれが最適な方法と言えます。たとえRGBであっても、第5章で述べたようにキャリブレーションをしない限りモニターに映し出される色は1台ごとに全部違います。カラーガイドは決してお安くはありませんが、どうしてもという時はこれが最も有効です。

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<7.直近の切手を見てみよう>
 切手趣味週間切手のカラーマーク部分を高解像度スキャンしました。プレスリリースでは凹版1色 (黒) とオフセット6色と発表されています。これを向かって左側から順に見ていきましょう。
 黒の凹版の後に6色並んでいます。このうちグレイ、金は補色 (ほしょく) と言い、CMYKでは表現できない色の場合に特色として使われるものです。大事なことはグレイはともかく金色はCMYKでは表現できません。その他、銀や銅といったも金属色もムリ、蛍光カラーもムリです。デザイナー現職時代に「何とかならないのか?」とごねるお客さんもいましたが、性能以上のことを要求されても無理なものは無理です。
 色彩に乏しい古い切手ならまだしも、これから発行される切手ではこうした補色や特色が多種多様に使われることでしょう。CMYKで印刷できないから使われるのですから、将来的にはCMYKで色分解しても捕捉できない色がたくさん出てきます。なので、目安とするにしてもRGBの方がまだマシなのです。
 あくまでも目安とするならモニターに映った色を見て手元の当該物と比較してください。それでも厳密にはモニター1台ごとに色味が異なることは承知されてください。

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December 28, 2021

精密複合印刷の高品位切手

 郵趣1月号が配達された頃合いだと思いますので抜粋部分をそのままご覧いただきたいと思います。取り上げますのは2021年9月1日にスペインが発行した「切手収集サービス75年」小型シートです。同国郵政の郵趣部門設立75年記念切手です。主題は若い女性の顔のコラージュで、平版・凹版・dry hit・金属蒸着の複数の印刷方式を使っています。消印をイメージした記念ロゴの部分にはエンボス加工も施されています。

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 こうした精密複合印刷の高品位切手はIT技術が切手製造に導入された1990年代から見られるようになりました。その一例としてニューカレドニアの例を誌面でもご紹介しています。注目すべきは、これこそ現代郵趣だという点です。
 デジタル時代の高品位切手は手が届かないような高額切手ではありません。しかも値上がりも期待できます。ニューカレドニアの例では1999年の発行時は3,100円だったものが今年10月の市価はなんと8,500円に跳ね上がっています。
 いくら貴重でも日本切手は日本人収集家しか興味を持っていないものです。ですが、このテーマなら日本で買い手がつかなくても世界市場で売ることができます。切手で資産保護をと本気でお考えならお勧めできる収集テーマです。

 かつては珍品稀品だけを集める郵趣家がいました。金にあかせた悪趣味な金満収集と陰口を叩かれていた向きもありますが、私は「持たざる者の僻み」だと思います。収集の世界はシビアなもので、モノを持っている者こそが正しいのです。持たざる者は何を言ってもダメです。

<予告>
 公式FDCを3部個人輸入しました。私が主催するファンタスティック・スタンプクラブ(FSC)の、facebook内に設けたメンバー限定会議室で2部を提供する予定です。

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April 13, 2021

自然な切り替り出現例が大事

 偽造防止対策を加えた改版で、現行券の在庫がなくなり次第順次切り替えです。またしても最初期出現例の押印狙いで、在庫が残っているのに新券目当てに請求を要求するモンスター・コレクターが現れないことを祈ります。自然な切り替わりでなければ意味ないからね。

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 新券が配給されたら連絡してくれるよう懇意局さんにお願いしておき、当日か翌日くらいに新旧両券を並べて貼った記念押印・引受消印をしておくぐらいが適切です。新券の完封日付のチェックも怠りなく。
 何でもかんでも押印すればいいではなく、整合性をよく考えて。知恵が足りないカバー類を作ったりすると後世まで馬鹿にされますよ。

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 最初に必要な手当ては現行券の確保が最優先。新券は後回しで構いません。高額面から10枚ブロック等の大型マルティプルを買い抑えておく、あるいはそれこそマルティプル貼りの実逓便を作っておくのが良いと思います。
 もしも懐具合に余裕がなかったらいちばん高い140円券だけでも買い押さえておきましょう。将来的に「貴重になるのは高額面」が鉄則です。

 

 

 

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March 30, 2021

手押印をやめて機械印刷にしよう

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 日加修好80年記念の切手付き封筒です(カナダ・2009)。カナダではこれをCommemorative Envelopeと呼び、Pスタンプのファミリーと理解されます。その注目点は消印も印刷であることです。やってることはかつてのアラブ土侯国のC.T.O.と同じですが、手押印(ハンド・スタンプ)も広義には印刷の一種ですから、それを人間がやろうが機械がやろうがどちらでも構わないでしょう。特に初日カバーのような規格品であれば、同じ位置に鮮明に郵便印があることの方が商品としては優れています。

2021033004  もうひとつはガールガイド100年の公式初日カバーです(オーストラリア・2010)。こちらは専用封筒に切手が貼られています。よく見る一般的な初日カバーです。面白いのはやはり消印で、インクではなく赤銅色の箔押し加工です。いわゆるホット・スタンプ方式です。つまり機械による押印です。手押印にこだわらなければこうした変化も楽しめます。

 印刷による初日カバーのメリットは、切手帳に比べて製造コストが格段に安いこと、消印済なので売れたら売れただけ利益に計上できること、消印済なので額面に拘らない価格設定ができること、豪華な作りにすれば日本だけでなく外国にも割増価格で売れること、モンスター・クレーマーが押し方について付け入る隙を与えないこと、当然チョン消しも完全に撲滅できること、そして一連の事業をすべて外注できることです。

 日本郵便さんはご存知かどうか、私たち郵趣家は切手のみを残し切手帳は捨ててしまいます。基本的にアルバムリーフに収まらないもの、嵩張る分厚いものは邪魔物としか見做さないからです。

 

 

 

 

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July 16, 2019

にじいろのさかなのひみつ

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 北九州市立美術館分館に見に行ってきました。切手原画の展覧会は極力行くことにしているからです。
 にじいろのさかなは、作者のマーカス・フィスター氏の母国スイスで2種の絵入りはがき(料額印面付き絵はがき)が2001年に発行されています。うろこにはホログラム箔が押されているので変り種切手の一環として入手しています。同一図案の切手も同時発行されているのですが、絵本同様に箔押し加工されているのは絵入りはがきの方だけ。当時は技術的・コスト的にも切手への加工は難しかったのかもしれません。

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 郵趣家の目線ではホログラム箔押しと言うと偽造防止と装飾の2つの目的を考えます。展覧会ではマーカス氏自身による解説映像がリピート上映されており、箔の持つ本当の意味を知ることができました。本展覧会における最大の収穫(学び)でした。なお、マーカス氏は「箔」とのみ仰っていて「ホログラム箔」とは発言されていませんでした。そのことを尊重し、マーカス氏の発言内容については「箔」とのみ表記します。

 大事なものをみんなで分かち合う、プレゼントすることを象徴する表現を模索されていました。宝物やコインのような誰にでも意味が伝わるシンボルです。その時に「箔」と巡り合ったのだそうです。虹色に光り輝くうろこの誕生です。それを絵本の出版社に提案したら即決。ところがそれをどのようにして製作するか?、コストは?という大きな壁が立ちはだかりました。最終的に箔押しをするならやろう、そうでなければこの話はなかったことにしよう、という二者択一を迫られることに。その結果はご存知の通り。透明フィルムに黒で印をつけて指示、印刷屋さんがそれをもとに版を作り、熱で箔を貼り付けるという具体的な工程まで説明されました。日本でも民生品にもよく使われているホットスタンプ方式です。

 マーカス氏の解説映像を見る前に原画を見る順路設定でした。その原画にも箔があったので不思議でした。解説映像ではきちんとそのことも説明されていました。私の疑問の通りで、もともと原画に箔はなかったそうです。ところが一般の人たちは印刷工程など知る由もなく展覧会では大不評。そこで手作業で箔を切り、スプレー糊で原画に後貼りしたそうです。

 つまり、にじいろのさかなにおける箔押し加工は、作者にとっても見る側にとっても作品のコンセプトそのものでありました。

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 ミュージアムショップでポストカードを3種購入しました。左から「にじいろのさかな」「こわくないよ」「まけるのもだいじだよ 表紙」です。講談社さんじきじきの製作品ながら、やはりというべきか箔押し加工は無理だったようで、いずれも白とグレイのインクで箔押しが表現されていました(きらりと光る光彩付きです)。

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 マーカス氏自身がお気に入りだと紹介されていたのが下から鯨を見上げた絵。海面の上から降り注ぐ太陽の光も好ましいと。なので参観記念にその絵が収められている「にじいろの さかなと おおくじら」の一冊を購入してきました。

 おしまいになりましたが、日本語版の翻訳者は谷川俊太郎さんであることも特に申し添えておきたいと思います。

◆刊行25周年記念 にじいろのさかな原画展 ーマーカス・フィスターの世界ー

 

 

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August 22, 2018

ムーミンワールドの記念印付きはがき

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 公務ご出張中の落合専務理事からご恵送いただきました。お忙しい中恐縮です。
 フィンランドはご存知作者トーベ・ヤンソンの母国、ムーミンの生まれ故郷です。島ひとつがまるごとムーミンのテーマパークになっているナーンタリの記念郵便印が押されて届きました。はがきも現地で求められたのでありましょう、図案の一部にラメを混ぜた樹脂印刷がなされ、光の角度によってキラキラ光ります。
 貼ってあるのは同国直近のムーミン切手「ムーミンと仲間たち」セルフ糊式切手帳(2017)の1枚です。全世界あて無額面切手で現行では€1.40相当です。記念印は切手にかけて1回、さらに余白にもう1回で計2回押されています。記念印の図案をはっきり見せるのが目的のようで、これが可能な国は他にもハンガリー等で見受けられます。ただし、日本の押印規程では2回押印(空押し)は認められていませんのでご注意を。
 この他にタンペレ市のムーミン博物館でも専用の記念印が常用されていますので、興味のある方はぜひ現地に行かれてみてください。
 なお、母国フィンランド以外で世界最初に純ムーミン図案切手発行が許されたのが日本郵便です。なので日本はムーミン切手収集をするにはたいへん恵まれた環境であることも覚えておいてください。

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June 02, 2018

収入印紙19種が図案改正

 6月1日付で国税庁のプレスリリースがありました。昨今の収入印紙偽造事件の頻発にかんがみ、7月1日に最新の偽造防止技術を用いた新デザインに図案改正されます。郵便切手も収入印紙も作っているところは同じなので、共通のテクノロジーが見受けられます。外国切手では既に使われているけれど、日本では切手も含めてこれが初めてというものもあります。詳しくは下記URLをご覧ください。

  >http://www.nta.go.jp/information/release/pdf/inshi_kaisei.pdf

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[特殊発光インキ]
 可視領域では無色だが、紫外線ランプの照射で発光するインキ。郵趣ではUVインク(紫外線インク)と呼ばれているもので、世界各国で実用化されています。有名なのはウクライナとベラルーシで、ほぼすべての切手にUVインクでシークレットマーク(秘符)が入れられています。

[マイクロ文字]
 微小文字と呼ばれているもので採用例に事欠きません。日本で言うと、もっとも身近なものではレターパックライト、同プラス、スマートレターの料額印面部分に使われています。15倍以上のルーペで見てみてください。こんなところに文字が!ときっと驚かれることと思います。今まで気づかなかっただけでしょう。

[パールインキ]
 見る角度でパール色の光沢模様が現れる技術。これも切手ではお馴染み。サクラ62円普通切手があったら目の高さで照明光にかざして見てください。郵便マーク「〒」と桜の花びらのマークが光って見えるはずです。

[イメージリプル]
 特殊レンズを重ねると文字が現れる技術。これもアメリカ、スペイン、オランダ等の切手で用いられています。専用のレンズをあてると隠し文字や絵が見えるというもので、郵趣の世界では「切手デコーダー」と呼ばれています。日本切手での採用例はありません。
 しかし、アメリカでは1997年から導入してきたデコーダー技術を、経費削減計画の一環として2004年に終了しました。

[メタメタリックインキ]
 専用シートを重ねると模様が消える技術。郵趣では採用例を知りません。日本の収入印紙が世界初かも?!。

[メタリックビュー]
 見る角度を変えると複数の模様が現れる技術。これも郵趣では全世界で60件ほどの導入例があり、一般的に「偏光視覚」技術と呼ばれています。
 古くは1992年イギリスの高額普通切手に用いられたパール顔料入り特殊インクが知られています。光学的変化インクことOVIと言い、スイス・ローザンヌのシクパ社(Sicpa)が開発しました。
 日本切手でも2002年の切手趣味週間「賀茂競馬図屏風」で初めて採用された「メタリックマルチイメージ」印刷がよく知られています。
 また、国によってはインクではなく特殊なフィルムを切手印面に貼り付けることで偏光視覚効果を出している例もあります。

[着色繊維および透かし入り用紙]
 全券で用いられている着色繊維および透かし入り用紙は、切手ではもっとも馴染み深い昔からある技術です。いわゆる「透かし入り毛紙」です。しかし、印刷効果が優れないため、日本切手では昭和12年に毛紙を、昭和20年代後半には透かしをやめてしまいました(収入印紙のみ継続)。
 しかし、昨今は発光剤を染み込ませた着色繊維を使うことでUVライトで光るものや、裸眼では繊維が見分けがつかないものなど、世界的には着実に進化しています。security fiber(セキュリティー・ファイバー)とカッコ良く呼ばれています。

新しい収入印紙200円券、300円券、1,000円券あたりをお求めになって観察されますことをお勧めします。

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November 09, 2017

BLOODHOUND SSC

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 今年の9月22日に発行されたばかり、自動車の速度記録更新のために作られた専用自動車ブラッドハウンドSSCの小型シートを個人輸入しました。発行はおなじみイギリス領マン島です。
 この小型シートはいろいろ興味深いポイントがあります。まず、切手のように見える4枚ですけど、(1)(2)の2枚だけが切手で残りの2枚はタブです。左端のコックピットの写真なんかすっげーカッコいいと思うんですが残念ながら切手ではありません。なんで切手にしないのかはわかりません。しかも切手の2種も不思議です。国名と額面がこんなに小さいのでぱっと見では切手だとわかりません。デザイン重視だろうとは想像できますが、ちょっと度が過ぎます。

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 さらに(1)はぜひ実物でお試しいただきたいことがあります。真っ黒に塗りつぶされている車体部分は示温インク(サーモクロミックインク)が使われていて、指先で温めると透明になり、インクの下の図案が見えるという仕掛けが施されています。切手を指で直接触るのはご法度ですから、ビニール袋越しに触れてみてください。黒色がすーっと透明に変化する様が体験できます。

 示温インクが最初に使われたのはイギリス切手「気象」小型シートで2001年の発行でした。以後、少しずつ世界中に広まりましたけれど、現時点でも約30件しか実用化されていない数少ない変り種切手です。ストーブに近づけるようにして高温に晒さないと変化しないもの、急激に反応が収まってしまうものなど、機能の面ではかなりばらつきがありました。本券は指先程度でも容易に透明化し、反応状態も数分間に渡って長続きするなどかなり良くなっています。じきに日本の郵趣市場でも出回ると思いますのでぜひ1シートをお手元に。


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November 07, 2017

ラインストーン風加工

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2017111602 たまたま立ち寄った郵便局でラインストーン風ハローキティ年賀状のサンプルを見て触ってびっくりしました。盛り上げ印刷なのか、それとも樹脂成形物を圧着してあるのか、あるいはまたまったく違う工法なのか瞬時にはわかりませんでした。しかし、これはおそらく日本郵便初の特殊加工だと思います。

 通常販売されているものではないので、厳密には日本郵便の純正郵便商品と言えないかもしれません。しかし、金箔押し、写真付き切手、立体視の3D加工といい、日本はなぜかいずれも最初にはがきでトライアルするという独特の段階を踏んでいます。純正品でないからと見逃したら、ファーストイシューを見逃すことになるのではないかとの懸念も大いにあります。

 差出人の住所氏名等を印刷しないで空白のままでも受け付けてくれるようです。5種全部100枚ずつオーダーしたとして総額85,850円。5種一組で約859円(1種につき約172円)・・・・私が取りまとめ役をするとして5種一組を900~1,000円見当(送料別)で共同購入参加してやろうという殊勝な方はいらっしゃいますでしょうか?。せめてトータルで半分の50組ぐらい引き取り手がいらっしゃれば踏み切るのですが。12月8日までに結論を出さねばなりません。うむむむ・・・・


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