15色カラーマーク
スタンプマガジン誌12月号の販売広告に載っていたので買い求めました。国際切手展<ワシントン'06>記念にマーシャル諸島が2006年5月27日に発行した「アメリカ1922年シリーズ」を模した20種連刷シートです。これは2005年発行の「歴代アメリカ大統領」45種連刷シートのカラーマーク18色に次ぐ多さの15色です。このアメリカのユニカバー社によるオフセット15色印刷がいかにイレギュラーであるか、きちんと説明できますか?。
現代のオフセット印刷はCMYKの4色掛け合わせですべての色が表現できます・・・実際は違うのですが・・・。日本のふるさと切手「47都道府県の花」(1990)も図版の通りその4色しか使われていません。
それから15年も後の時代にもなって、しかも印刷大国のアメリカで15色もの特色印刷をしています。これでは少ない経費で印刷可能なオフセット多色刷りの意味がありません。グラビア印刷並みの製造コストがかかっていると思われます。
以下は私の推論です。オリジナル切手は戦前の単色印刷です。もちろん4色分解技術など存在しない時代ですから全種が特色印刷です。特色印刷とは、印刷の熟練工さんが経験でインクを調合し、最初からその色そのものを作りました。なので、ルーペで観察しても異なる色の掛け合わせにはなっていません。
そうやって作られた特色を、後の時代になって4色分解しても再現できるとは限らないのです。それゆえ、以前にも「戦前の単色 (特色) 印刷物を色分解しても無意味だ」と繰り返しお話ししています。特色と4色分解では色の表現域が異なるからです。詳しくはこちらのページを再読ください。
参照記事/提案:色の区別を示す目安はRGBを推奨
カラーマーク部分を拡大してみましょう。15色すべて特色ですね。なぜ、わざわざこんなことをしたのか、それは色調が正しく再現できなかったからです。
CMYKのどれか1色を調整すると他の切手にも影響が出て色味が変わります。「47都道府県の花」のような絵柄ではその差異がわかりませんが、本件の場合は下手がモロにバレてしまいます。変な色調であったなら、それこそ全米の郵趣家がクレームをつけるに違いないと恐怖したはずです。
それに、そんな危ない橋を渡るくらいなら、経費が高くついても特色印刷してしまった方がリスクが少ないとの判断が優先されたのでしょう。で、結局20種の切手のうち同じ色の5種を除いた15色を特色インクで再現したものです。このあたりは印刷の実務経験がないと想像がつかないと思います。
さらにカラーマークに丸い黒枠がついている点にも注目です。これは枠内にカラーマークがぴったり収まることで印刷位置を合わせようとしたものです。枠からはみ出ている色の切手はいずれも右方向にずれて”オフセンター”状態になっています。
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