無額面切手のお話(後編)
8.永久保証切手の登場
無額面切手にして同時に永久保証であると明確に意思表示したのは、私が知る限りではイギリスが切手発行150年を記念して1989年に発行した1STと2NDのマーチン切手が最初です。それぞれ4枚田型と10枚ブロックの2種の切手帳形式で発行されました。1STは日本で言えば普通郵便、2NDはそれよりちょっと遅い郵便のことです。
切手発行150年記念の特別な意味合いで、将来、郵便料金がいくらになっても加貼切手不要でこのまま使うことができるとされました。これこそが「永久保証」のコンセプトです。つまり、ユーザーは郵便を出す権利を買っているのであって定額の金額分の切手を買っているわけではないという解釈です。長期的に考えれば郵便料金は値上がりしていきます。一種の先物取引のようなものと言えましょうか。
9.カナダはPERMANENT (パーマネント) 切手
2006年11月、カナダが一挙に7種の永久保証切手を発行しました。印面のアイコンPはPERMANENTの頭文字。発行時は国内あて30g以下の基本料金用切手として51cで発行されましたが、翌年1月には52cに値上がりすることがわかっていました。今買っておけば1cお得ですよ、という意味です。
ところがカナダはたいへんにえげつなく、以後毎年1cずつ値上げし、そのつどパーマネント切手を発行するという販売戦略を採りました。さすがに付き合いきれないと判断して全種を購入するのは2015年頃でやめました。
10.アメリカはFOREVER (フォーエバー) 切手
カナダに遅れること半年後の2007年4月、ついにアメリカが本格的に永久保証切手の発行に踏み切りました。リバティー・ベル図案にFIRST-CLASS FOREVERと表示しています。ちょうど1オンス (28g) 以下が39cから41cに値上げされるタイミングで発行されました。カナダ同様、今買っておけば2cお得ですよ、という意味です。
そして2011年からは同国のすべての記念切手がフォーエバーになったのはご存知の通りです。
11.先物取引だけに損することもある
郵便を出す権利を買ったのですから逆に損することもありえます。滅多にないことながら唯一の先物損の例があります・・・というより私自身が体験しました。
フィンランドが2010年5月4日に発行した「ジャンピング・フォー・ジョイ」小型シートは第1種用€0.80×5種の€4.00。発行時に同郵政で未使用を購入しました。ところが手紙振興政策で同年8月1日に€0.75に値下げされてしまいました。つまり1シートあたり€0.25の損。後日入手した使用済シートの消印は2020年10月7日。旧蔵者さんはどちらの時価で買われたのだろう?と思うことでありました。
12.変わった例
[2回こっきりの「無面値郵票」]
台湾も1991年から数えて実に26年ぶりの2017年に郵便料金が値上げされました。これに合わせて2種の無額面切手が発行されました。初日印に「無面値郵票」と表示されているのが興味深いです。
なお、台湾が無額面切手を発行したのは1991に続いてこれが2例目。詳細はわかりませんがこれ以後の発行は確認されていません。
[2度の加刷で無額面に]
元は$1.20額面のアルマジロ普通切手でした。それが$1に改値加刷され、さらに額面すべてが加刷で抹消され、結果的に無額面になってしまいました (ウルグアイ・2007)。何が起きても不思議ではないお国柄、いまだに経緯が掴めません。実逓使用例を探してもいますが、図の未使用切手帳を1冊入手できて以来進展がありません。
まとめ:無額面切手も種類がある
・・・ということがおわかりいただけたでしょうか。無額面と言っても数字がないだけで郵便等級、種別、記号など用途を表す文字や記号が表記してあるのが通例です。それも、国や地域・時代によって表現が違ったり、有効期限があったり、加貼切手が必要だったりと、その運用はまちまちです。
特に追加料金の不要な永久保証かどうかは正直言って全部は把握できていません。実逓カバーを見て永久保証のようだ・そうではなさそうだと個別に類推しています。例えばフィンランドは、公には言っていないけれど永久保証のつもりでやっている・・・と、なかなか巧妙な回答をいただいています。まあ、無額面にしてさえおけば後でなんとでもできますから。
現代はIT技術の進歩のおかげでマーケティング調査も流通量把握も容易になりました。いくらの切手をどのくらいの量発行すれば良いかも掴めているはずです。日本も総務省が積極的に法改正し、永久保証の無額面切手を発行できるようにすれば、膨大な紙資源、お金、時間の節約、さらに現場の郵便局員さんの労務を軽減できると思います。








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