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April 15, 2019

ご寄稿大歓迎です

 ニューヨークにお住いの日下部次男さんという方からお手紙をいただきました。私のHYPER Philatelistブログをご覧になってのことで、大変光栄に存じます。郵趣家はこうした積極的なやりとりのために通信先を教え合っているのですから大歓迎です。以下に頂戴したお手紙全文をお示しします。その要点は以下の通りです。また、私の見解は図版の後にるる記します。

(1)明治銀婚切手の原版が5日で完成したのは疑わしい。
(2)印面変種が膨大にあるのでクラッチ製法ではない。
(3)印面変種は意図的に入れられた秘符である。

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(1)明治銀婚切手の原版が5日で完成したのは疑わしい。

 ”原版”が原図のことなのか、それとも実用版の意味なのか、お手紙でははっきりしませんが、いずれにしても確かに疑わしいと思います。
 私は職業デザイナーなので仕事場にパソコンが入る前、すべて手作業だった時代もかろうじて知っています。1980年代のことです。明治銀婚が発行されたのはそれよりも90年も昔の話です。当時の技師さんが超絶的な技能を持っていたとしても5日でというのは信じがたいです。ですが、関東大震災によって当時の資料が焼失してしまったので確認のしようがありません。一次資料に接することができない以上、この問題は一種の”神話”として語り継がれていく・・・でよろしいのではありませんか?。

(2)印面変種が膨大にあるのでクラッチ版製法ではない。

 これも一次資料に当たれないので推測の域を出ません。出ませんが、印面変種の多さこそがクラッチ製法の特徴だと考えます。と言うより、当時はクラッチ製法しかなかったはずなので疑問を挟む余地はありません。大急ぎで発行しなければならない条件下で、一定以上の技術水準を持った技師を何十人も動員し、均質な原版を製造するというのは労務・製造管理上も不合理です。

(3)印面変種は意図的に入れられた秘符である。

 日下部さんの研究ノートの一部をご覧いただきます。私が製作のディレクター、プロデューサーならもっとはっきりした秘符を入れるように指示すると思います。意図的に秘符を入れるということはその判別も容易であることが条件です。このわかりにくさは当時のクラッチ製法における性能限界を意味している、つまり完コピーができるだけの技術水準がなかった証拠であって、それ以上の意味はないと思います。
 そもそも、秘符を入れる動機があったのでしょうか?。私はないと思います。

2019041503

 

[製造面研究は無意味である]

 誤解されることを恐れずに書きますと、一般論として私は郵趣における製造面研究は無意味だと思っています。その理由は2つあります。ひとつは一次資料に当たれないこと、ふたつ目は印刷現場の経験なしではお話にならないこと、です。
 一次資料に当たれないのはどの研究分野でも致命的です。数少ないチャンネルを通して印刷局等に疑問質問を投げかけ、答えられる範囲内でご教示いただく。あるいは一次資料に当たる資格を持つ博物館学芸員さんなどに頑張って研究してもらいましょう。
 イギリスのロイヤルメールのように、自らが製造面の詳細を、時にはエラーまで公表し、それを切手販売ビジネスの一環として活用しているような環境であれば話は違ってきますけれど、今の日本ではありえないことです。

 ふたつ目、現場を知らず本を読んだだけで印刷を語るのは無理です。文法を学んだだけで英語をしゃべれ、ルールブックを読んだだけでスポーツをしろと言っているようなものです。
 近所のちょっと大きめの印刷会社にアルバイトでもしに行って、まずは現代の印刷はどうなっているかから体と頭で知ってください。それから少しずつ時代を遡り、活版印刷の時代、昔の平版印刷の時代などについて熟練の職人さんから教わってください。話はそれからです。

[実例:10円コノハナムグリ普通切手]

 具体例をひとつお話しします。昨年、地元の郵趣会報に「10円コノハナムグリ普通切手に横紙を発見した」と記事が載りました。噴飯ものとはまさにこのことで思わず「一体いつの時代の話だよ」と口走ってしまいました。
 グラビア印刷用紙に縦紙・横紙があったのは製紙技術が未熟だったからです。意図的に漉き目を作ろう残そうとしたわけではありません。印刷用紙に反りがあったら輪転印刷に困るではありませんか・・・その光景がぱっと脳裏に浮かびますか?。
 反りのない平滑な用紙であることが理想であって、昭和30~40年代はそれが困難だっただけです。さらに裏糊が湿気を吸収したり、乾燥で縮むなどの二次的要因で漉き目が強調されることもありました。昭和40年代前半の記念切手は、乾燥した日に外に出しておくと裏糊が縮んで丸まりますね。これは一種の性能欠陥であって意図的に丸まる仕様にしたわけではありません。
 しかも今から50年も昔のお話です。半世紀も経ているのですから技術水準は劇的に進歩しているとはなぜ考えられないのでしょうか?。理由は簡単、印刷現場を知らない、本で読んだだけの知識しかないからです。

 10円コノハナムグリ普通切手の件はさらにオチがあります。それは使用済切手だったことです。水剥がしされ、プレス乾燥された末のものですから二次三次の要因が加わっています。これではお話になりません。出所が明らかな保存状態の良い未使用切手を数多く、それもなるべく大きなブロックやフルシートでないと史料には不向きです。

 日本では製造面研究はご自身に技能と環境が備わっていないと無理です。やったところで限界があります。膨大な郵趣家人生時間を無駄使いする危険性が高いのでお勧めしませんしできません。

 

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