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February 12, 2018

切手投機の残照

 沖縄の本土復帰が現実のものとなり始めた1970年代に一部業者による沖縄切手投機が仕掛けられました。その時の謳い文句が「沖縄が本土復帰すればそれまでの沖縄切手は使えなくなる=値段が上がる」というトンチンカンなものでした。ふみカードの例をひくまでもなく、有価証券としての信用保証がなくなれば無価値になるのが当たり前で、それ以降は骨董価値しかありません。
 大量印刷される切手の場合、よほどの理由でもない限り品薄になることはありませんので、未使用切手をただ漫然と買っていただけでは資産保全にはなりません。有価証券としての価値を失った沖縄切手ならなおさらです。今でもそこそこの値段がついているのは、当時多額のお金を払った人がいまさら安売りしたくないだけの話で、金券ショップに持って行けば実力のほどが知れます。ドル建てなので日本では郵便に使えませんし、とっくに使用禁止ですから仮にアメリカに持ち込んでも使えません。金券ショップさんは買い入れ自体応じてくれません。つまり有価証券としての沖縄切手の価値はゼロなのです。

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 図は1977年(昭52)の旬刊切手投資第227号です。ブームが過ぎてもう2年も過ぎているのに往生際悪くまだこんな扇動をしています。明らかすぎるほどに明らかな作り話に乗っかった人なんて実際はいたのでしょうか?。
 1975年(昭50)から切手収集を始めた私はギリギリのところで沖縄切手投機の被害には遭わずに済みました。なぜなら1974年の暮には”作られた沖縄切手人気”が潰えて市価も暴落してしまったからです。一連の沖縄切手投機事件は、日本郵趣史における黒歴史として今も深い影を落としています。

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 まことしやかな相場表まで乗っています。図案が美しく、そこそこの発行数もあったために格好の投機材料に使われた「守礼門」が1シート11,200円で先月より200円の値上がりだそうで。今となっては笑い話でしかありません。切手の場合、数が少ないと言ってもある程度の数がないと取引が行われないので投機材料には向きません。現存数1〜10枚といった本物の珍品切手の場合、数十年に一度しか取引市場(オークション)に登場しないからこそニュースになるのです。ここで言う切手投機とは性格が全く違います。
 同じ相場表に載っている見返り美人、月に雁、ビードロ、写楽のシート価格相場も吹飯ものの値段が付いています。あれから40年後の今、いったいどんな値段がついているかヤフオク等でご確認ください。この値段の1/4でも買い手がいないことがおわかりになると思います。

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 そんな折、昨日の北九州切手のつどい2018でこのはがきを入手しました。1973年(昭48)当時の旬刊切手投資の年間購読料の領収通知です。受取人は著名な郵趣家です。当時は名のあった郵趣家も相当数絡んでいたようです。上記のように”黒歴史”ですので、関係者の皆さんも大半が一切口外せず墓場まで持っていかれることでしょう。しかし、自分は一連の黒歴史はすでに歴史の彼方に消え去ったものとは考えてはいません。

 沖縄切手投機事件以前にも何度か切手ブームがありました。おまけに切手が使われたグリコ切手ブーム、東京オリンピックや大阪万博の時の切手ブームがそれです。最後の万博が1970年(昭45)年で、当時15歳だった少年もとっくに還暦を過ぎています。それ以前の月に雁だビードロだと熱狂した世代は70-80歳です。私自身は今年でやっと57歳ですからそれら切手ブームを一切体験していません。世代が全然違うのです。
 年に一度くらいの割で、かつての切手ブームを回顧する雑誌特集がありますけれど、世代が違うのでまったく感応しません。むしろ、その後に続く沖縄切手投機事件などを連想させ、悪しき記憶を呼び覚ます”余計なお世話”だとすら感じ苦々しく思っています。悪しき記憶とは、そうです「切手は儲かる」という幻想です。それが杞憂ではない実例は数多あります。

 コレクターの未亡人が亡くなったご主人のコレクション(と言っても記念切手をシート買いしていただけ)を換金処分に来られた際、「全部で何億円になりますか?」と真顔で尋ねられた例があります。

 また、切手の交換会に使われていると知った貸し会議室企業の経営トップが「金銭による売買などけしからん」と郵趣会への貸し出しを禁じてしまった例は枚挙にいとまがありません。私ですら2回も経験しています。特に会議室が使えなくなるのは痛打です。経営トップの皆さんは総じて高齢ですし、かつての切手ブームを連想し、会議室内で札束が飛び交っているとでも誤解されているのではないでしょうか。利益目的だけのために不特定多数に対して不正な売買行為をしている巣窟、あるいはブラックマーケットかのような先入観に支配されているのでしょう。事実とは全く違うのですが、残念ながらそんな企業トップの皆さんは決して交換会そのものを見に来て誤解を解いてくださるということはありません。お忙しいのでしょうね、きっと。

 金儲け目的なら私も”なんでも20円”なんて売り方はしませんって。100枚売ってやっとこさ2,000円にしかなりません。こんな少額のいったいどこがお金儲けと言えるでしょうか。確かに金銭は介在しますけれど、あくまでも収集趣味のためであってお金儲けのために参加している同好者はひとりもいません。その取引を禁じられてしまったら、そもそも交換会を開催する意味がありません。ここ山口県も専業の切手商さんが一軒もないため、収集家どうしが自主的に交換会を開催して収集品の流通を促しているという至極真っ当な活動なのです。そうでなければ公益財団法人の資格は得られるものではありません。

 いつまでたっても月に雁だビードロだと言い続けることは、結果的に、まじめで最新でもある郵趣活動とその社会的認知を阻害しているのではないかと、私はそう痛感しています。

 1970年代後半以降、日本の伝統郵趣を中心に発展し、それ以前の郵趣とは実相が大きく変化しました。使用例収集や消印収集のこと、テーマ収集の新興と発展など、きちんと説明すれば郵趣家でない人も読んで理解できて共感できるものばかりです。旅行貯金も風景印収集もそうした”その後の郵便シーン”を代表するムーブメントのひとつです。


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