防諜印
ずいぶんのどかなイラストが入ったカナダのカバーですね。表面記載事項の制限が厳しかった日本と違い、アメリカやカナダでは戦前から企業広告を大きく示した商用郵便が盛んでした。これはバンクーバーにあったハスキングス&エリオット自転車商会がバンクーバー・サン新聞社に送ったものです。男女のサイクリングのイラストに「自転車に乗ろう、楽しみと健康のために、そして経済的でもある」のキャッチ・フレーズも見えますね。機械消印の標語部まで「健康のために正しい食事を」なんて入ってます。自転車以外のさまざまなテーマチク要素を含んだカバーと言えましょう。
ですが、実は戦争関連のテーマで入手したものです。機械消印の丸い日付部は"JUN 13/11 PM/1944"(1944年6月13日午後11時)とあるのみで局名表示がありません。防諜目的で意図的に局名無表示にした消印は軍事郵便物にはよく見られますが、これはカナダ西海岸の一般郵便物での使用例です。差出も宛先もはっきり書いてあるので何をいまさらな感もしますが、おそらくバンクーバー郵便局で取り扱われたものでありましょう。
これが本格的な軍事郵便物だとさらに厳しくなります。同じくカナダの例を下に示します。慰問のタバコを送ってくれたダンロップ・タイヤ&ラバー・グッズ社員への返礼状の表面(上)と裏面(下)です。受け取った兵士が簡単に返礼状を送れるように慰問タバコそのものにこのはがきが添付されていたものです。表に"ON ACTIVE SERVICE"とあるのは"活動的なサービス"ではなく軍事郵便という意味です。基本的に無料のものを指します。これは受け取ったダンロップ社の工場部門が受領印を押してくれたおかげで1942年2月9日と判別できますが、いわゆる郵便印(消印)の類はどこにもありません。
慰問袋に心づけの品を入れて最前線に送るなんてのは日本でもやってましたよね。というより世界共通です。同類を並べて見るだけでも妙に面白いものです。このくわえタバコの兵隊さん、ちょっとかっこいいですねえ。これを見てまた喫煙再開しようかと・・・・は思いませんけども。
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