乳ガン治療・ピンクリボン運動切手
2005年9月29日、ハンガリーが「乳ガン治療」と題する切手を発行しました(上図左)。郵便料金90Ft(フォリント)に寄附金が50Ft加算されて販売価格は140Ft。寄附金額の大きさもさることながら、多くの切手収集家はそのデザインにいぶかしげな印象を抱きました。それは1998年にアメリカが発行した「乳ガン研究」切手とそっくりだったからでした(上図右)。発行年が7年も空いていて通常の共同発行としては不自然だし、これはハンガリーがアメリカの真似をしたのだろうと皆が疑いました。しかし、ハンガリー郵政の報道発表文により、一人の医師の熱意が実現した第一歩だったことを私たちは知ることとなりました。
もともと、アメリカの乳ガン研究切手の発行を実現させたのはカリフォルニア州のサクラメント乳ガン外科センター教授の外科医Balazs Bodai氏でした。切手の持つメディア性に着目した氏は、さらに全世界に向けて"Fight against breast cancer”(乳ガンと戦おう)のメッセージを伝えるため、ホイットニー・シャーマン氏(Whitney Sherman)デザインの同一図案切手をアメリカ以外の世界各国でも発行しようという活動を続けていたのです。氏の生まれ故郷がハンガリーだったおかげで、まず同国での発行が実現したというのが真相でした。ハンガリー切手1枚あたり50Ftがハンガリー乳ガン研究所(Hungarian breast cancer research)への寄附金に供せられました。
ハンガリーでの採用が突破口を開いたのでしょう、その後は少しずつ賛同国・地域が増えてきています。私が把握しているだけで下記の12ヶ国になります。中でも特筆すべきはケニアです。元のイラストレーションはガンとの戦いを象徴する狩りと戦いの女神を描いたものですが、ケニアはアフリカの黒人女性像に描き変えています。さらにフランスなど共通図案を選択しなかった国を含めればまさに全世界的な規模と言っていいと思います。
・乳ガン研究(アメリカ1998)
・乳ガン治療(ハンガリー2005)
・同上(ベリーズ2006)
・乳ガン撲滅(ケニア2007)
・乳ガン研究(ガンビア2007)小型シート
・同上(グレナダ2007)小型シート
・同上(ミクロネシア2007)小型シート
・乳ガン撲滅(コソボ共和国2008)
・同上(マケドニア2009)
・同上(ヨルダン2009)
・ピンクリボン運動(乳ガン撲滅)/(オーストリア2011)
・乳ガン撲滅(スロバキア2013)
※記念名は発行時の郵趣誌での記述に従いました。
なお、最初のアメリカ切手には額面数字はなく「First Class」とのみ表示されています。いわゆる無額面切手とか郵便等級表示切手と呼ばれる券種です。発行当初は第1種郵便料金32cに寄附金8cの計40cで販売されました。ちょっと意外ですがこれがアメリカ最初の寄附金付き切手(First Semi-postal stamps)になりました。その後の郵便料金値上げにも関わらず無額面切手の長所を生かして同一図案で発行が継続されています。
2011年12月23日、オバマ大統領は2015年12月31日まで販売を延長する公法No.112-80に署名しました。現在は郵便料金44cに寄附金11c加算の55cで販売されています。
(椙山注:20141011追記)
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