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August 06, 2011

国立印刷局のパールインクカード

11080601

 いやあ見事に何も見えませんね。先の日本国際切手展会場で国立印刷局さんが無料配布していたカード2枚の画像です。みなとみらい地区の夜景を描いたもので、いずれも記念銘とともにパールインクで花火がプリントされています。いや、まったく見えませんね。スキャナーで読み取ろうとしてもこのようにただの夜景にしか見えないので、これを取り上げたブログ、サイトはないようですが、しかし、それこそが意味のあることなのです。

11080602 カラーマーク部分の拡大図です。左から4つまではスクリーン印刷(プロセス印刷)のCMYKの4色がYMCKの順で並んでいます。問題はその右側の3つ。淡いオレンジ、シアン、パープルの特色にパールパウダーが混入されているらしいことが示されています。「らしいこと」と曖昧な表現をしているのは、肉眼だけで判別できるレベルのものではない最新鋭の精密印刷だからです。係員さんにパール印刷ですよと説明されたから、自分もああそうなのかと思う訳で、説明なしに解説することなどまず無理です。それだからこそ、諸外国ではこの技術は切手よりも先に紙幣印刷に使われているのです。
 印刷を業とする者は、その試作品にみずからの最も得意な表現を込めます。まず指先で触ってみてください。パールパウダーが極めて微細なために特に盛り上がりもなく平滑に刷り上がっています。パール原料の雲母は細かく砕くとその輝きが減じてしまううえ、インキの皮膜が薄くても同様に効果が減退してしまいます。そしてあえて漆黒の闇夜を背景にしたのは、いかなる濃色印刷上であってもパールインクの輝きを損なうものではありませんという同局の自信を示しています。このカードをもらった方々、今一度手許に置いて見る角度をいろいろ変えて眺めて触ってみてください。

11080603 紙幣印刷に用いられるほどの特殊技術であるため、専門的には雲母の他にさまざまな原材料が使われているもののセキュリティーの面からその詳細が公表される機会は限られています。また、肉眼で区別をするのもほぼ困難であることから、郵趣シーンでは「偏光視覚切手」という大まかな表現を使うようにしています。その実例を7点ご紹介しておきます。

(1)£5ウィンザー城普通切手/イギリス(1992)
 公表されている世界最初の偏光視覚切手。見る角度によってエリザベス2世女王のシルエットがさまざまな金属的光彩の変化を示します。スイス・ローザンヌのシクパ社(Sicpa)が開発したパール顔料入りです。同時発行された£1、£1.50、£2各高額普通切手にも偽造防止目的のために使われています。と同時に世界最初の楕円目打切手でもあります。ハリソン父子社製。

(2)£1エリザベス2世女王普通切手/イギリス
 現行のイギリス切手の例。背景全体が偏光視覚になっていることが普通になってきた感があります。特に珍しい感覚もなくなってきました。日本のメルク株式会社が開発したパールインクの一種「イリオジン(iriogin)」を使用。デ・ラ・ルー社製。

(3)真珠/オーストラリア(1996)
 真珠の部分にパールインクを刷り込んでいます。発行当時の資料によるとフォイルテックス加工と言うそうです。

(4)指揮者トスカニーニ没後50年/イタリア(2007)
 印面左と下辺にL字型で入っているオレンジの帯部分にclear-gold interference inkなる乱反射・光干渉インクが加刷方式で塗布されています。パールインクではないようですが偏光視覚効果は明りょうです。

(5)国際女性の日100年/中国(2010)
 女性の青い横顔部分が偏光視覚。見た目にはパールインクそのものですがさすが中国、何のインフォメーションもありません。この不遜な態度ゆえにレベルの高い収集家ほどうんざりして中国切手を集めなくなるという大損をしていることすらも無視しているようです。さすが独裁国家は違うねえ。

(6)蛾/フィンランド(2008)
 ヒトリガを描く第1種用無額面切手(€0.70相当)。パール顔料で羽根を開いた状態(半分)を印刷しているのですがスキャン画像には全く再現されません。実物でご確認を。

(7)漫画シリーズ第9集・炎の剣小型シート/韓国(2007)
 印面右下に馬の線図が見えます。普通シートでも同様の加工が施されています。Korea Minting & Security Printing Corporation製。

 なお、国際展会場で「このパールインクは印刷局さんで独自に開発されたものですか?」と質問しました。池上某であれば、いい質問ですねえ、と誉めてくれそうなものですが現実にはそうではなく、一瞬戸惑った表情をされた後「独自ではないです」と正直にお答えいただきました。となるとドイツ系のあの会社かな?・・・などと思う私でした。
 広く偏光視覚技術ということであれば日本切手でも既に2002年の切手趣味週間切手「賀茂競馬図屏風」2種で初めて使われたメタリックマルチイメージ印刷があります。しかし、国際展でPRをしたとなると、いよいよ日本切手でもパールインク・イリオジンインクが使われる日が近いのかな?・・・とも思う私でした。

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