横須賀局のふたつの風景印
有名な誤刻印です
花シリーズのやまゆりの発行にあたり,横須賀郵便局では従来から使っていた風景印だけでは印顆そのものの数が足りないということで、初日押印用に同一図案のものを新調しました。ところが、ペリーの久里浜上陸記念日のスペリング「JULY」を「JURY」と間違えてしまいました。ケアレスミスの部類です。しかし、信じられないことに誤記のまま初日押印業務に使われました。その結果,企業製FDCはことごとく誤記風景印が押されているようです。正しい表示の旧印押しFDCを見たことがありません。そうはいっても、局の窓口には以前から使っていた印顆があったはずで,個人で作成されたものの中に旧印押しはないだろうかと長年気に留めていました。
そしてついに図版のような見事な両印押しFDCを発見しました(図版は部分抜粋)。誤記の事実すら忘れられているかのように、シミまみれで雑多な郵趣品の中に埋まっていました。作成者は何度もご紹介しています谷信勝さん。よくぞ押印してくださいました!と思わず喝采を叫びました。ご生前の谷さんとはついに一度も交流はありませんでしたが、その郵趣思想は自分にはよくわかります。氏の遺品コレクションの一部を引き受けることになったのは天啓のような気すらしています。
天の巡り合わせであれば私が何とかしなくてはなりません。長年研究してきたシミ抜きの技術を駆使して図版のレベルにまで復元しました。風景印の印色でありますトビ色を損なわないように行うのは難易度が高い作業になります。様子を見ながら何回かに分けて処理し,これ以上はやり過ぎ・危険になる直前で止めました。それゆえ、若干のシミが残っていますが,10年くらい様子を見て劣化が進むようなら改めてその時に対応を判断したいと思います。
なお、こういったシミ抜きも使い方を踏み誤れば立派な偽造・変造になりますので、その方法は一切公表しません。ご理解いただけることと思います。
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