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August 30, 2010

事情のある国の切手ほど面白い

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 著者にはまだ伝えていないことがある。実は、内藤本はすべて読むことにしている。

 「事情のある国の切手ほど面白い」が届いたとき、まずその帯に書かれたコピーに目が行った。「南野陽子の切手を外国が発行する理由」とある。今までの内藤本にはなかったキャッチーな文言である。そもそもメディアファクトリー新書は"驚きと感動のエンタテインメント新書"だそうだが、なるほど、これはエンタテイメントを楽しむ視点で読むものだなと姿勢を正した。
 実際、ごく平均的な良識ある社会人であって、新聞やニュースなどを普通に読み聞きさえしていれば別に参考書も不要で読み進むことができる。ああ、あの報道はこんな風に切手上に現れていたのかといちいち納得できる。正直、今世紀に入ってからの話題がこれほどふんだんに取り上げられているとは思わなかった。ハイチ大地震、リーマンショックとドバイショック、ギリシャの経済破綻、カダフィ大佐の"転向"、ムガベの無能によるジンバブエの国家自滅、チベット問題、台湾問題そして日本の北方領土と竹島というふたつの領土問題にまで及ぶ。ここでは切手が発行されるごとにリアルタイムに読み解く面白さがあり、それをエンタテイメントと称しても構わないだろう。またそれは書き手にとってはけっこうな体力を要するものであることも私にはわかる、身に染みてわかる。
 個人的な期待と志向から言うと、第5章の「外貨をぼったくる国」が最もエキサイティングであった。紙数の関係でかなり制約を受けたそうだが、長年タブー視されてきた切手代理発行エージェントについてここまで踏み込んだ一般書はなかったように思う。関係者が存命中であることを考慮すれば、某ユダヤ商人のアイデアが切手に関するひとつのビジネス・モデルになったことが明記されただけでも多方面に良い影響を及ぼすだろう。
 それは、いんちき切手の代表格とも言えるSTATE OF OMAN表示のラベル切手がなぜ長い間発行され続けたのか、そしてその実逓カバーがごく初期にしかないのはなぜか。イエメン王党派のラベル切手もまたいかにして実際に使われたか。アラブ土侯国が宗教上最大のタブーとも言える女性の裸を描くヌード絵画を切手にして問題はなかったのか。今でも考証不足のおかしなジャポニカ図案の外国切手が散見されるのに、なぜ大阪万博関係に限っては妙に正確な図案が多いのかなど、ふだんは何気なく見過ごしている事柄もいつの日か、かの著者によって解明される日が来るだろう。そう考えただけで胸躍る私だからこそHYPER Philatelistと自称しているし、だからこそ内藤本はすべて読むことにしているのである。

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