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November 14, 2009

Traveling Philately

 一応、郷土山口県の消印も集めてはいます。

 「一応」とただし書きが付くのには理由があります。正統的な郵便史研究の手法で、今の山口県を構成する長門国・周防国の時代からきちっと集めておられる諸先輩方は既にいらっしゃいます。山口市のOさん(私の父の教え子さんという奇遇!)や周南市のてらずみさん(私の職場近くにお住まいという奇遇!)などがそうで、今さら私のような者が正面から割って入るなど畏れ多いことでございます。そこでいつものように考えました。そう、スキ間を狙えと。結果、私はいわゆる「赤印」の類をターゲットにしました。小型印、風景印、特印といったトビ色(赤茶色)のハンコのことです。これらは伝統郵趣、マルコフィリー、郷土郵便史のいずれにおいても戦力外通告選手のようなもので、昔から「士農工商トビ色印」などと言われています(?)。
 しかし、そんなモンしか獲物が残っていないのですから、分相応にやるしかありません。機会があるごとに買い集めていると、収集ファイルは赤茶色だらけでうるさいことうるさいこと。風景印などはあの印色自体が下凡であって、それを気にしないどころか綺麗だと集めているヤカラの気が知れない、などと言い散らかしている当の私がこのザマであります。ばか丸出しとはこのこと。

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 そのばか丸出しの私が、先月開催された「切手のフリーマーケットin広島2009」で入手したのが上の記念カバーです。既に故人となられた収集家Y.K氏の所蔵品が主催団体に寄贈され、それがチャリティーで1通100円均一で売りに出されていたものです。
 昭和47年、NHK大河ドラマの「新・平家物語」に便乗して当時の国鉄バスが企画した観光バス券を貼り、自宅近くの広島呉本通七郵便局を手始めに、広島中央局、山口・秋吉局と、巡る土地ごとに消印を押してもらった記念カバーです。山口・秋吉の風景印があるから入手したようなもので、郵趣品と言うよりは郵趣記念品と言った方が正確な極めて個人的なメモリアル品です。郵便とは直接関係がない記念切符や記念たばこなどを貼り合わせる手法も、昭和50年代を最後に廃れてしまった古い作法です。買い手がつかないで売れ残るにはじゅうぶんなケバケバしさです。

 それでもなお、さらに私は下のようなカバーを買い進めました。これも周防大島を巡る観光バス絡みの記念カバーです。この当時はまだ山口県本土と周防大島とを直接つなぐ大島大橋がなかったことがポイントです。

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 大島大橋が完成したのは昭和51年です。それまでは国鉄が大畠〜小松港間に連絡船を運航していました。カシェ中にはそれを意味する「おおばたけ」と「こまつ」の地名が表記されています。本カバーの作者もまたこれを手に渡海したのです。
 日本には有人離島だけで421島、無人島にいたっては6,426島もあるということですが、郵便の上でこれを示すことができる事例は案外少ないものです。ただの記念カバーとスルーしないで、ちょっと立ち止まって観察すると別の面が見えることがあります。

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 実はこれら観光みやげ的記念カバーを買い求めた本当の理由は別のところにあります。一見すると、どこかの封筒会社の市販品かのような印象を覚えますが、そうではなく、カシェはすべて故Y.K氏自らが超絶技巧を駆使した謄写版(ガリ版)の多色印刷だというのです。鉄筆とヤスリで耕版作業をしたことのある方なら一目瞭然、複雑に重ね刷りされた那須与一らしき武者絵も、シンプルではあるけれどもムラのないベタ刷りの周防大島の地図も、ともに並の技術ではありません。他にも普通の初日カバー類がたくさん売られていましたが、私家版カシェのためかほとんど買い手はなく、しかし、私はそのいずれもが素晴らしい出来ばえであることに驚嘆していました。金が取れるレベルであることはもちろんのこと、ガリ版印刷全盛時代のれっきとしたプロではないかとさえ思われます。残念ながらY.K氏とはまったく面識がありませんので本当のところはわかりませんけれども、気に入ったものをいくつも選んで買ったのでした。
 それらを総合すると、Y.K氏は卓越したTraveling Philatelistであったのだという確信を抱くに至りました。超一流のカシェ封筒作り技術があり、これに行く先々で記念押印していくその楽しみ方は、むしろ21世紀の今の方が理解されやすいはずです。生前のうちに氏の「仕事」を正しく評価し、見い出して広く知らせる見識を持った人に巡り会うことがなかったことをたいへん残念に思います。
 オリジナリティーあふれた豊かな「郵趣」を嗜んでいらっしゃる方々は多く、そんな人たちをできる限りすくい上げて世の中に知らしめること、つまり「新しい収集価値観の創造」は重要な私の仕事のひとつであること、先入観に左右されて「玉」と「石」を見誤らないようにしなければと、Y.K氏カバーを眺めながら決意を新たにしているところです。

 そんなY.K氏カバーを皆さんも入手することができるかもしれませんよ。それが今日・明日の二日間開催されている<スタンプショウ=ふくやま>'09です。私も高速料金1000円を利用して明日朝から参観する予定です。

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