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July 07, 2008

世界最初のサル切手

080706

 今から10年ほども前、鹿児島に住み始めた頃に当時の郵便局のお偉いさんに、批判的なニュアンスもりもりに、こんな差別的な言われ方をしたことがあります。

 切手収集家ってエラー切手とかを有難がって集めるマニアな連中らしいじゃないか

 はいはい、そこの血の気の多いあなた、そんなにすぐにカッカしないように(笑)。このような侮蔑的に見下した態度をしてしまったのは当該局員さんが無知だったからに過ぎません。当時はJPS鹿児島支部が再建されて日が浅かったため、郵便局員さんと言えども長い間具体的な「郵趣活動」を目にする機会がなく、管理職級でも切手収集や切手展とは何かをまったく知らなかったのです。
 そこへ、稀に一般のニュース等で、どこぞの国のなんちゃら言う上下逆さま印刷ミスの切手が何億円で取引されたとか聞いたりすると、偏見に満ち満ちた「非常識極まりない収集家イメージ」が妄想されていくわけです。
 そこには、エラー切手は正規品以下の出来損ないであって、本来世に出てはならない非合法アイテムであるという、官の立場であれば至って真っ当な価値判断が、無意識のうちに前提としてあるわけです。これを、いかなる手段でか入手し、珍品と称して高値で売り買いする行為にもまた不健全さや反社会性を感じるのでありましょう。
 ま、他愛のない誤解です。事実、JPS鹿児島支部が切手展「スタンプショウかごしま」を開催するようになると、そんな偏見はすぐに雲散霧消してしまいました。もちろん、JAPEX上位入賞作品を招聘するなどの工夫もしていた結果であって、メンバーが軽い気分で作ったような、ただ身近なだけのありふれた作品しか展示しなかったら(できなかったら)「低レベル=幼稚」のイメージを払拭できず誤解が解けるには至らなかったと思います。

 さて、そうは言っても収集家サイドでも似たような思い込みや誤解があります。一般の人(非郵趣家)と同様に「図案ミス切手やエラー切手は高価だ」と漠然と思ってはいませんか?。また、それ以前に図案ミス切手と、製造途中に発生した極端な偶発変種であるエラー切手との区別がきちんとできますか?。
 日本はおしなべて品質管理が徹底しているのでエラー切手が世に出ることはほとんどありません。それゆえ、取引価格が高いことを否定できません。そのイメージが図案ミス切手に関しても混同していませんか?。さらに、世界的に見れば管理が厳しいのはむしろ少数派で、アメリカやイギリスなどはエラー切手でさえ大量に出回っており、よほどの条件でもない限り何百円程度で買えるものが多いという事実を正しく理解していますか?。

 そして、やっとここで図版の切手についてお話をいたします。今日、地元の防府市で開催された「西中国地方切手の集い'08」で購入した北ボルネオ(現マレーシアのサバ州)が1899年に発行した4c普通切手です。これが世界最初のサル図案切手です。興味深いのはそれだけではありませんで、印面に「POSTAGE」と「REVENUE」のふたつの表記がなされている点です。旧英領切手ではよくあるのですが、これは「郵便切手と収入印紙を兼ねています」という意味です。これはちらっとでも記憶しておくと、いつの日か役に立つこともあるでしょう。
 長い前振りでしたから、もちろん話はこれだけではありません。このおサルさん、チンパンジーに見えるでしょう?。マレーシアにチンパンジーは居ませんよね、変ですよね。正解はこれです!。

 本来、オランウータンを描くべきところ、デザイナーが実物を見たことがなく、製造関係者もまた誰一人として確認もせず、結局テキトーにでっちあげてチンパンっぽくなった図案ミス切手

 植民地時代にありがちな上から見下した施政根性がこういう鬼っ子を生み出したのでありましょう。考証をしないまま誤図案で発行された切手はけっこうありまして、官サイドはその事実もまた本当は知らないのでしょう。エラー・アイテムを集めていることを問題にする前に、根本的にこんな鬼っ子を作ってしまった責任の方が重いことをお忘れになっているらしい。
 結局、このチンパン似のオランウータン切手はついぞ図案修正されることもなく長く使われ続けました。その帝国主義的な押し通しぶりはひどいですな。

【参考】
 現時点で約7,900点を記録している私の郵趣データベースからきちんと数字を示しましょう。

・図案ミス切手総数:483点
・同上評価(市価やカタログ価)合計:379,018円
・平均値:784.7円

 このうち日本切手は総数28点、評価合計10,720円、平均値382.8円です。どうです、大した数字ではありませんね。統計上でも収集する側が非難されるべき重大な要因はありませんね。800円に届くかどうかの小額ごときで人格まで否定しかねない物言いをする暇があったら、発行者サイドこそ図案ミスをしでかさないよう努力するのが先決問題です。

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