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October 2005

October 22, 2005

スイスのマイ・スタンプ

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 もうじき郵趣11月号が皆さんのお手元に届くと思います。意味がよくわからなかったので、私の連載記事に取り上げられなかったアイテムをここでご紹介したいと思います。上図はスイス郵政が同国内の個人と企業を対象に、これから始めようとしているカスタマイズド・スタンプ(切手そのものの図案を自由にカスタマイズした切手。Cスタンプ)の商品名"My Stamp"のサンプル図案切手です。同郵政は2種類の色彩表現方法があることをPRしたいがために、このような色彩の帯で構成した図案にしたようです。

 色彩の表現には2種類あって、ひとつは「光の3原色」と呼ばれるRGB方式です。これはテレビやパソコンのモニターなどに使われているもので、R=レッド、G=グリーン、B=ブルーの3色を混ぜると白になります。色を混ぜれば混ぜるほど明るくなるので、これを"加色混合"と言います(Additive color combination)。それを意味しているのが50CHF切手です。
 もうひとつは「印刷の3原色」と呼ばれるCMY方式です。これは切手をはじめとする紙の印刷物に広く使われているもので、C=シアン、M=マゼンタ、Y=イエローの3色を混ぜると黒になります。普通はこれに特色の黒(K)を加えてCMYK方式と呼ぶのが一般的です。これは、3色を混ぜて作った黒は濁っているうえに、特色の黒インクを使った方が安くて黒味に冴えがあるからです。小学生の頃、水彩絵の具で欲しい色を作ろうとして色を混ぜていけばいくほど暗くくすんだ色合いになった記憶があるでしょう。それに象徴されるように、この方法を"減色混合"と言います(Subtractive color combination)。それを意味しているのが100CHF切手です。
 下にRGBとCMYKのカラーパターン図も掲げておきます。小学生の頃、美術の教科書や科学博物館の展示などで、この図を目にしたことがあると思います。

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(左:RGB、右:CMY)

 日本の写真付き切手サービスを利用したことがある人なら、原稿として送った写真と比べて出来上がったものは色味が不明瞭で不満が残ったという経験があるでしょう。これはRGBとCMYKとでは色の再現域(Gamut、ガモット)が異なっていて、CMYKの方がRGBより色の再現域が狭いことが原因です。下図で示しましたように、明度の高い(鮮明な)赤、青、グリーンはCMYKでは表現できません。その欠点を補うには、CMYKの他にライトグリーンやライトマゼンタなどの特色を追加するのが一般的です。手元にオフセット印刷の日本切手(ふるさと切手に多いです)があればカラーマークを見てみてください。CMYKの他に色が2色くらい追加されているものが散見されるはずです。
 日本の写真付き切手の印刷機はどうやらCMYKのみで追加の特色はないようですね。用意した原稿通りの色彩の再現を希望されるなら、写真にせよイラストにせよ、一度パソコンに取り込んでPhotoshopなどの画像処理ソフトでCMYKモードで画像加工し、CMYKの4色だけを使ったプリンターで印刷し、それを原稿として送るのが精一杯かと思います。

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 話をスイスのマイ・スタンプに戻しましょう。して、何がわからないのかと言うと50CHF切手の方です。前述のようにRGBはあくまでも光の色構成であって印刷のCMYKでは表現し切れないのです。何とかそれらしくしているようですが、いわゆる"疑似"であってRGB方式そのものではありません。
 あえて想像をたくましくすれば、日本の写真付き切手サービスとは違って電子データでの入稿も受け付けるという意味なのかもしれません。ユーザーがモニターで見ている色彩をなるべくその通りに再現します、という意味です。ただし、これも本当はそう簡単ではなくて、カラープロファイルを統一すること、モニターのキャリブレーションを正確に行うこと、そのカラーシステムが印刷機で再現可能な範囲であることなど、ユーザーもスイス郵政の製作サイドもともにマッチングさせておかなければ正確な再現は(本当は)無理なのです。

 はてさて、スイス郵政の真意は一体何なのでしょう?。

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October 20, 2005

6本指のレフティ切手

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 母方の祖父が左利きだった関係で、特定の作業は左手でないとうまくこなせないなど、私にも若干のDNAが伝わっています。そんな軽い理由で、左手を描いた切手こと"レフティ切手"にも興味を持っています。実際のコレクションについてはHIDENさんが大家でいらっしゃるので「きってレフティ」を参照してください。
 そんなレフティな私たちも驚く切手が世に出ました。チュニジアが発行した「世界禁煙デー(World No Tobacco Day)」に描かれている、タバコを薦める誘惑の左手(紫色の手)がなんと6本指!。たぶん図案ミスだろうと思うのですが、こんな大胆なミスにも関わらず発行中止になったとか回収された等々の話は聞き及んでいません。ひょっとすると、かのチュニジアでは6本指に何か隠喩でもあるのでしょうか?。なお、発行日は5月31日。オフセット印刷による20万枚発行です。
 ちなみに6本指のレフティ切手はこれが初めてではありません。モナコが1947年5月9日に発行した「アメリカ切手100年切手展」の中の50c切手が世界初です(下図参照)。切手収集家としても知られるルーズベルト大統領がコレクションを鑑賞しているシーンを描いたもので、切手を持った左手の指が6本に見える超有名な図案ミス切手です(もっとも、ピンセットを使わず素手で切手に触っている絵自体が既におかしい)。原画はフランスのマリアンヌ切手を描いたことで有名なガンドン。彫刻師はまた別人で、原画の段階で間違っていたのか、彫刻師のミスかは現在に至ってもなお判明していません。

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(右は6本指部分の拡大図)

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October 14, 2005

言われなきゃ気付かない

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 郵趣サービス社さんのホームページがいつの間にか更新されてて、前々から気になっていた自動頒布会のページもぐっと良くなっていたので安心しました。ちっとばかし切手収集のキャリアを重ねると、この自動頒布会の便利さにハタと気付くことになります。身近に切手屋さんがない地方在住者や、本業が忙しくてなかなか余暇時間が持てない職種の人にはすごく便利なのです。

 がしかし、その便利さに気付いている人が少ないこと自体を頒布会主催会社(郵趣サービス社さんに限らず)が気付いていないのではないかと懸念していました。

 最初から解説文が印刷されたきれいなリーフに納められて届くので、ユーザーはそれをバインダーに入れるだけで済むんですから、切手の知識の乏しいビギナーであってもお客さんになりうる可能性が非常に高い。リーフ代が加わる分、割高になりますが、それこそが"付加価値"というもので、後年に至っても資料として十分に使えます。記憶だけに頼っていたらとても覚えられるものではありません。切手業界で特に発展したと言ってもいい便利なこのシステムを、切手業界以外のメディアにも積極的にインフォメーションすべきだと思います。
 その自動頒布会の中でも今、非常に期待しているのがこれから始まる「ワールド・トピックス<雑学編>」です。私が郵趣誌に連載している新切手紹介記事のような「言われなきゃ気付かない(=言われたら欲しくなる)」そんな頒布会であって欲しいなと、まあー勝手に期待しているところです。
 例えば、イギリスは現在の近代郵便制度を発明した国の名誉を示すために切手に自国名を表記しない。そのかわり元首(つまりエリザベス2世女王)の横顔のシルエットが入れられていること。そこまでは普通の収集家なら常識として知っていますよね。しかし、これには話の続きがあって、女王自身が題材になった場合はシルエットも省略されるのです、必要がないから。
 そこで、郵趣誌2005年8月号P.61に掲載されている上記の切手「軍旗敬礼分列式」6種ですけど、何か気付きませんか?。6種をまとめた小型シートも同時発行された結果、シルエットのある切手とない切手が混在してしまったのです。これではいかにもデザインのロジックが破たんしたような「まとめ方」ではありませんか。切手のデザインにうるさいイギリスなんですから「これは仕方のない例外です」ってなことは言って欲しくないです。
 ね、こんなささいなことでも言われなければ気付かないし、知ってしまったら何だか欲しくなったでしょ?。ついでに言うと、英領の一部の国では、現在の女王に合わせて"おばあさま"姿のシルエットになっています。どうです、気になって夜も眠れないでしょ?。(んなことはない)
 とにかく結論としては、そんな笑える面も備えた、毎月何が届くかと、わくわくするような頒布会であって欲しいと期待しています。もちろん、私はとっくに申込済です。

頒布会トップページ

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October 05, 2005

TVドラマ「六千人の命のビザ」ご案内Part.2

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 去る9月7日の記事でご案内しましたTVドラマ「六千人の命のビザ」の追加インフォメーションです。本放送はいよいよ来週10月11日に迫ってきました。その予告番組(メイキング)が今週末にもオンエアされます。日本テレビでは10月8日(土)の午前10時30分〜11時25分だそうです。地域によって放送時間が異なるようなので、日本テレビ・読売テレビ系列の各地の放送局の番組表をご確認ください。

 9月28日に発生した北海道根室沖の漁船転覆事故のことがずっと気にかかっていました。コンテナ船の当て逃げが事故の原因であることがほぼ確定し、それも加害側がイスラエル船籍であると報じられていたので、早期解決・和解の方向に進めばせめてもの不幸中の幸い、否、必ずや良い方向に進むだろうと確信めいた思いさえも抱いていました。
 果たして昨日の10月4日、コンテナ船を所有するZIM社(本社・ハイファ)のゴダー社長が来日しました。事故発生後わずか一週間のうちに「イスラエル運輸省の海難事故専門部署による調査と並行してZIM社でも社内調査を進め、先行する調査の結果が出次第、遺族や被害者に賠償する。早ければ5日にも北海道に向かい遺族や被害者らに謝罪する。(報道各社より)」という明確な対応策を携えてのことでした。過去の海難事故の例と比較しても、このような素早い誠意のある対応は皆無に近いと思われます。
 こんな最近の出来事にも、おそらくは杉原ビザやダッハウ強制収容所を解放した米軍日系人部隊442連隊の記憶が深く影響しているのではないかと思います。戦後、あまたの発展途上国にODA資金をつぎ込んできた日本ですが、万一、類似のトラブルが発生したとしても、官民を問わず、かのような対処を講じてくれるのはイスラエルとトルコぐらいではないだろうかとも思うのでありました。
 せめてイスラエルの事例についてはTVドラマの原作本「六千人の命のビザ」、そして切手関係の記述もふんだんに取り入れられている姉妹本「決断・命のビザ」(上図)も読んで史実をインプットしておきましょう。今からならメイキング番組も本放送にもまだ間に合いますよ。

(「決断・命のビザ」 大正出版、2,100円、ISBN4-8117-0308-1 C0023)

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October 04, 2005

SLやまぐち号の切手発行

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 9月25日の記事に続いて地元ネタをまたひとつ。現在進行中で世界各国から発行されているテーマ「蒸気機関車200年」の一環として、やっと(?)SLやまぐち号を描く切手が発行されました。発行国はブータンです。ただし、切手そのものではなく連刷シートのシート地に採用されています。やまぐち号の写真は十中八九「無許可使用」でしょうけど、ま、いいじゃありませんか(こらこら)。
 10月8日に広島のRCC文化センターで催される即売会に行く予定ですのでひとつ予約お願いします・・・と書いておけばアオヤマスタンプさんがKEEPしておいてくださるに違いない(笑)。よろしくお願いします。

【参 考】
SLやまぐち号ホームページ:http://www.joho-yamaguchi.or.jp/c571/home.html

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October 01, 2005

植草甚一スタイル

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 亡くなってから既に四半世紀以上にもなるのですが、「J・J」こと「植草甚一」なる名前そのものが肩書きかのような偉大な自由人がニッポンにもいたのです。私とて亡くなる直前の数年間ほどの短い時間、今はなき月刊誌「話の特集」でその片鱗を垣間見させていただいた程度のものでしかありません。

 しかし!

 2005年5月に、こんなすばらしい本が出ました。今でこそ"気に入った切手だけを選んで集める"行為も伝統的な郵趣の世界でも徐々に認知されつつありますが、植草甚一さんは遥か昔に『ぼくがほしいなと思う郵便切手はデザインがいいやつだけ』と断言して収集しておられたのでした。素敵なパッケージ・デザインのマッチ箱に入れられた切手のコレクションは、一般的な切手収集とは明らかに一線を画していて、あたかもオブジェと化したアート作品のようです。
 切手収集をたしなむ者は、すべからくこの一冊を手許に置き、優れたコレクターは同時に優れたクリエイターでもあらねばならないことをリアルに体験していただきたいと思います。

(「植草甚一スタイル」平凡社発行/コロナ・ブックスNo.118 価格:1,680円)

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