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January 29, 2005

ワールド・スタンプNOW/2月号追補

 皆さんのお手元にも郵趣2月号が届き始めていることでしょう。今回から始まりました私の新連載「ワールド・スタンプNOW」で、キャパシティーの面から割愛したアイテムを中心に追補の形でいくつかお話したいと思います。

○フェラーリ/ジブラルタル P.56
 テーマがテーマなので、あえて取り上げなくても注目する人は多かろうと思いまして採用しませんでした。ただ、私は別の視点でジブラルタル切手をウオッチングしています。それは、ジブラルタルは本当に赤色の使い方がうまいんですよねえ(この切手に限らず、です)。目の醒めるようなシャープな赤の表現が卓越しています。他のフェラーリ切手と並べてみると、その差が歴然です。フェラーリというテーマがいいのではなくて、そこに投入している赤色の使い方がいいんです。
 印刷は赤と黒をいかに表現できるかが基本中の基本です。そこがしっかりしているから出来映えの良い切手が製造できるのでしょう。その良さを最大限に引き出した切手は、おそらく郵趣4月号あたりでご紹介できるかと思います。

○エクストリーム・スポーツ/ニュージーランド P.62
 すっげーカッコイイ切手です。もう、それに尽きます。およそコンピュータ・グラフィックス(CG)でデザインするならこうでなくっちゃ!です。印面中の余白の白地の残し加減が実に絶妙で、すかっと抜けたスポーティーな空間感覚がヨイです。

○国際白杖の日小型シート/オマーン P.62
 全面に点字の盛り上げ印刷を施しています。エンボス加工も含め、全面に点字を採用した小型シートは全世界でもまだ5種ないと思います。
 オマーンという国はイスラム教国なのにかなり趣の異なる切手を発行しています。イランのようなガチガチの原理主義とは対極にある感じです。トルコのように建国の父アタチュルクが日本の明治維新に感激して西欧近代化を推し進めたというような歴史があるわけでもないので、その風変わりな理由は自分自身のスタディが足りなくて確たることがまだ書けません。内藤先生にマジでレクチャーして頂きたいです。

○P.63 ポーランドとロシア
 社会主義時代のイメージをすっかり払拭して新しいイメージを定着させることに成功したポーランド切手。一方、旧ソ連切手のイメージが色濃く残っているロシア切手。この対照的な2国の新切手が同じページに並んでいるのは面白いです。
 一見して「旧ソ連っぽい」と感じるのは様式に縛られているからです。装飾的な表現といい主題のアングルといい社会主義時代のアプローチと大差ありません。枠がはまった中でいくらいじっても斬新なイメージは出にくいものです。日本の小判、菊、田沢もそうですが、様式が硬いとその様式美は感じられても、それ以上もそれ以下もなくなってしまうのですね。様式ができた段階で切手デザインと呼べる作業は9割がた終わってしまっているのです。一般にその様式美も時代とともに陳腐化していくものですから、現ロシア切手がいまいち冴えないのは、今で言うところの「デザイン哲学」がこの国にはまだ根付いていないからなのでしょう。

○美術切手/スロバキア P.65
 上記とさかさまなことを書きますが(笑)、旧チェコスロバキア時代を彷佛とさせる味のある切手ですねえ。平版と凹版を組み合わせた重みのある表現は独特です。昔のフランスの美術切手とも風合いが違います。これは同国の凹版彫刻者の技量が切手の出来ばえに強く影響しているからです。
 日本ではあのスラニア氏ほど知られてはいませんが優秀な凹版彫刻師さんが何人もいらっしゃるのですよ。このレベルになるとまさに名人芸の世界ですから、現役である限り今後もスロバキアならではの凹版切手を製作し続けて頂きたいです。

○2004年北京国際切手・コイン博覧会(加刷)/オーストラリア P.53
 国際規模の展覧会があると既発行の小型シートの地に金や銀で記念銘やロゴを加刷して発行する、このやり方は戦後日本の濫発小型シートを連想させるものがあり居心地の悪い感じがします。中国香港もちょいちょいこれをやるので困りものです。確かに切手印刷の世界でこそ金箔・銀箔といった金属系の箔押しは2000年のミレニアム頃からようやく盛んになってはきたものの、切手以外の世界では特段に珍しいことではありません。22Kの金箔だから高い値段での販売もやむなし・・・みたいな考え方は、よほどの国家レベルのお祝い事以外はやめてもらいたいです。いくら「箔付き」でもこう度々では値うちが下がるというものです。
 その意味で金箔押しをうまく使っているのはタイ王国でしょう。タイ切手ほど金ぴかが似合う、それも成り金趣味でなく、というのは稀有な存在です。

○ヤシガニ小型シート/フィジー P.56
 見たまんまやないけ!と突っ込みを入れたくなるほどに単純明解な変形シートです。あまりにも単純明快に過ぎるが故に採用しませんでした。フィジーもこういうあからさまな変形シートを良く出すので食傷気味です。強いて良い点を言えばサイズが小振りなので収納には困らないことぐらいです。
 シートの基本形がありふれた長方形で、伸びた足部分のみちょこっとはみ出しただけの変形はアイデアが足りません。ココナッツ・クラブ(ヤシガニ)というくらいなのですから、シート地の基本形をココナッツ型にしていれば、かつかつ及第点だったかなとは思います。

○マカオ国際花火大会/中国マカオ P.60
 中国マカオにしては近年にないたいへん不出来な切手です。誌面の小さな図版ではわかりにくいのですが、小型シートの切手は写真がぼんやりしていて全体的にメリハリがありません。おまけに印刷ミスかと見間違えるような光線がシート地から切手までバッサリ横切っていて、これくらい修正で消せば良かったのにと、フィニッシュワークでの技術水準の低さが理解できません。
 なお、誌面では花火部分に蛍光インクが用いられていると記されていますが、正確には蓄光インクです。紫外線を照射後、暗闇の中でしばらくの間残光を発し続けます。

 だいたいこんなところですが、かく言う私もWイノウエ氏同様、すでに次号の原稿書きを固めなくてはならない時期に突入しています(苦!)。さて、どれを取り上げようかな???。

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Comments

firoさんへ
 あちゃあ、もろに名指しで書いてありますね。この手の問題は未然の予防というのがほとんど不可能なので困りましたね。
 長年、いかがわしい切手類を見ていますと、結局、善し悪しはさておき当該券種発行の事情が明確であること、そして必要があればその情報を得ることができる環境を作ること(博物館の仕事かもしれませんが)に尽きると思うようになりました。エージェント発行切手でも良いものもあり(例:シエラレオネが発行した小津安二郎顕彰切手)代理発行だからといってひとくくりに否定するのも惜しいです。最終的にはそれぞれの切手の発行元、発行意義などの情報を総合的に考えて各自で「ここまでは集める(認める)」といった線引きをするのが最善かと思います。明らかに切手とは呼べないようなものも、収集範囲を切手に限定していない人なら集める場合もあるでしょう。そこは自立した収集家として独自に判断していただきたいなと思います。
 私自身はほとんど収集していないにも関わらずPスタンプに対して寛容なのは、確かに切手ではない「耳紙」部分へのプリントは伝統郵趣の考えからすれば本道ではないにせよ、やはり見て楽しい様が理解できるからです。切手ではないからといって一概に否定することのほうがつまんないと思えます。耳紙を利用したものと言えば古くから「広告付き切手」というのがあり、それはそれとして独自の収集ジャンルも成立しています。厳密な「基準」を言うのなら、Pスタンプを否定するなら過去の広告付き切手も否定しなければ辻褄が合いません。
 後はまあ私の性格によるのですが、基本的には「何でもアリ」で、よっぽどおかしいものを極めて例外的に「排除する」に留めています。不謹慎かもしれませんが、なにごとも否定するよりまず肯定するところからアプローチした方が世の中楽しいじゃん!だからです。

Posted by: 椙山 | February 07, 2005 10:31 PM

遅くなりましたけど、URL載せておきます。
http://www.stamp-scandal.com/Satas.htm
社名も出ています。情報ソースがはっきりはしていませんが。
上であげた所以外では、あまり大々的に扱うディーラーは無いみたいですけど、最近切手の販売をはじめた
某大手文具・雑貨系のショップで見かけたりしますね。
主に、著名人や動物、あとやたらロータリーの図案が多く、一見して見分けがつくのですが、なんにせよ、
これまでの例と違い、見栄えがしますし、結構大掛かりのようなので、余計に厄介だと思うのですが・・・

Posted by: firo | February 06, 2005 06:21 PM

firoさんへ

 田舎暮らしなので具体的なことは何も知りません。その糾弾記事とやらが載っているURLをこそっと教えてくださいな。

 著作権無視のふざけた切手モドキの問題は面倒くさいですねえ。正統性がないからと取り扱わないディーラーさんが増えたりすると一過性のものとは言え「しょうもないモンなのに品薄で高くなる」弊害がありましょう。かといって、ばんばん売っちゃえ!とはなかなかいきませんし。

Posted by: 椙山 | February 03, 2005 11:28 PM

この記事にあまり関係があってなさそうな事なのですが、椙山さんは、すでにご存知かもしれませんが、
とある外国の切手商(あえて名前は出しませんが)を糾弾する記事をweb上で発見しました。
この某切手商が、最近になって会社名を変えていることなど、どうやら信憑性が高い記事のようです。

つまりは、この業者が、無許可で、実在する一部の国の切手発行権を取得し、或いは、著作権のような概念が無い国で、
原画の作者等に無断で、その国名義で切手を発行したりということを繰り返しており、
郵趣団体が、警告しているにもかかわらず、この業者は無視しています。
そして、この業者と日本の某大手切手商は、大々的に取引をしており、さらには、一部の切手は、売れ筋に
なったりしています。
この日本の業者も、おそらくこういった事情に気がついているとは思うのですが、売れ筋でもあるため、
手を引くに引けない状態なのかもしれません。

まだ市場に出ていない(というか今後も日本国内には出ないかも。)切手もありますが、素人同然の私が見ても、
日本の人気アニメキャラクターなど、どう考えても、マズいだろうという切手がすでに発行されています。 
このまま放っておいてよいのでしょうか。

Posted by: firo | February 02, 2005 12:32 AM

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