« あかつき便 | Main | アメリカ初の三角切手 »

September 14, 2004

これは困る!

040914.gif

 経済力が脆弱なために自国で郵便切手を製造する資金も設備もない発展途上国は世界中にたくさんあります。しかしながら、そういった国々から、およそ国力には似つかわしくない美麗な切手がたくさん発行されています。これは政府の代理で切手を発行する会社があるからです。これを一般に切手代理発行エージェントと呼びます。
 契約内容はおおよそ次のようなものです。国名の入った切手を代理発行し、名義料と切手の一部を当該国に納めるかわりに切手の販売権を得て、その大半の切手を独占的に郵趣市場に販売するというものです。切手のモラル低下を惹起した原因でもあることから、概して収集家の評判はよろしくありません。しかし、現実問題としてエージェントに業務依託している国や地域はたいへん多く既成事実化していますし、正規の業務請け負い契約をしている以上、商業活動の見地からも違法性はありません。どこまでを収集対象とするかは各人がそれぞれ基準を決めて線引きするのが妥当だと思います。
 そんなエージェント切手で、かなり困る特徴があります。発展途上国の物価は低く、当該国の郵便料金用切手だけをバカ真面目に代理発行していたら商売にならないというエージェント側の都合があります。そこで、低額券種は当然発行するとして、その他に、およそ適応する郵便料金などない高額券種も発行して利益を確保しようとしているのです。これが非常に困るのですね。
 エージェント切手はもともと郵便に使うことより収集家目当てに発行されているので(それが批判される最大の原因ですが)、エージェント切手ならではのアイデアあふれた楽しい切手なのに、極端な高額券種だと現実的に買い切れないという問題が発生しています。例えば、いわゆるディズニー切手もエージェント切手でして、切手屋さんで売られているものは決して高いものはないと感じていらしゃると思いますけれど、実は高額券種を意図的にはずした低額券種のみのセットにしてあるから安いのです。エージェント切手は、たとえ切手の知識がない人でも見てかわいい、楽しいことが唯一評価できる点ですから、買えないものが存在することは売る側が考えている以上に大きなマイナスポイントです。ですから、エージェント切手は一切認めないとの「郵趣右派」とでも形容すべき人々の意見も正当な論拠があるのです。
 上に掲げましたのもその悪名高き高額券種のひとつです。シエラレオネが1969年に発行したボーイスカウト60年記念切手全12種の最高額面券種です。完セットのカタログ評価が日本円にしておよそ9,100円で、これのみ発行枚数をもよほど少部数限定にしたのか、そのうち7,500円分はこの1枚に相当します。こんな無茶なことをしてはいけません。スカウト切手収集家のみなさんも、この切手で必ず一度は困ったなあと思われているはずです。
 今世紀に入り、堅実な切手発行政策を執ってきた先進諸国でも、実際に郵便に使うことより収集してもらうことを前面に打ち出した、いわゆる「スーベニア性重視」の国々が増えてきました。かつてエージェントがやってきた「無意味な高額券種の少部数発行」だけはなんとしても手を染めないでもらいたいものです。

(余談)
 上掲の切手は収集家が初日用の記念印を押したものです。それゆえシール剥離紙がついたままの状態で残されています。シエラレオネの旧宗主国は郵趣先進国イギリスです。おそらくイギリスもしくは他の欧米郵趣家か切手商さんが作ったものでしょう。1969年と言えば昭和44年で、あの日本万博の前年です。その当時から記念押印をするコレクターが実在したなんて、およそ日本では考えられません。

|

« あかつき便 | Main | アメリカ初の三角切手 »

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/46050/1430507

Listed below are links to weblogs that reference これは困る!:

« あかつき便 | Main | アメリカ初の三角切手 »